“あの動物たち”は「式神」、「ポポポポ~ン」の生みの親が語る公共広告の裏側 #あれから私は
SNS全盛の時代に、「あいさつの魔法。」が繰り返し放送されたら
「あいさつの魔法。」をめぐる一連の出来事は、若浜さんのクリエーターとしての心構えにどんな影響を及ぼしたのだろうか。 「全国に向けてメッセージを発信すること、その責任の重さを痛感しました。意図したところではない捉え方がなされる場合もある。多くの人々に認知していただいた、そこから感じるやりがいと、その反面、危険性もあるということを知った、忘れられない出来事です」 そして、あれから10年。ダイバーシティー&インクルージョンの考え方が日本でも進められるなかで、公共広告のプランニングは難しさを増していると若浜さんは言う。 「あらゆる部分に偏りがないかどうか、相手の立場になって考えているか。自己中心的な発想から見落としている点はないか。今はいろんな意味で、公共広告はつくりづらくなっているのを感じています。気にしすぎているという面もあるのかもしれません」 現在のようなSNS全盛時代に大災害が起こり、あの「あいさつの魔法。」連続放送が行われていたとしたら、炎上のターゲットになったかもしれない。 「想像すると、脅威を感じますね。しかし、どんな状況であっても、世の中のためになるメッセージを、誰も傷つけずに、わかりやすく噛み砕いて伝え、広げていくこと。これは、私だけでなく、制作に携わるチームみんなの考えでもあります」 新型コロナウイルスの流行は、世界中を不安に陥れた。感染者への差別、自粛ポリスのニュースが、あの日の記憶に揺さぶりをかける。そんな時だからこそ、公共広告のメッセージを、冷静に眺めてみたい。 「ポポポポ~ン」は今、10年後の私たちにメディア・リテラシーを促す呪文のようにも聞こえてくる。