新監督でも15位後退…イニエスタが「90分間戦いきれない」と語る神戸の苦悩とは何か?
同点に追いつかれた5分後に勝ち越され、さらに4分後にはダメ押しの3点目を叩き込まれた。緊張の糸が途切れたかのように、ヴィッセル神戸は後半24分以降のわずか9分間で立て続けに3ゴールを奪われ、 敵地Shonan BMWスタジアム平塚で一敗地にまみれた。 ボランチとして先発フル出場し、前半20分には自陣の中央から約40mの正確無比なロングパスを右サイドへ一閃。MF古橋亨梧(24)の先制ゴールをアシストした元スペイン代表のレジェンド、アンドレス・イニエスタ(35)が厳しい表情を浮かべながら敗因をあげた。 「チームとして90分間戦いきれていないところがあり、それが最終的に自分たちを苦しめている」 湘南ベルマーレに逆転負けを喫した、14日の明治安田生命J1リーグ第19節。今シーズンだけで実に3人目の指揮官となる、ドイツ人のトルステン・フィンク監督(51)が就任して約1か月が過ぎたヴィッセルは、清水エスパルスとの前節に続く黒星を喫して15位に後退した。 開幕直後からチームを蝕んできた、攻守のバランスの悪さは、フィンク監督のもとでも改善されていない。新加入の元スペイン代表のストライカー、ダビド・ビジャ(37)が得点ランキング1位タイの10ゴールをマークするなど、チーム総得点はリーグ3位の「30」を数えている。 一方で「34」に達しているチーム総失点はリーグワースト2位。フィンク監督の初陣だった6月15日のFC東京戦こそ、イニエスタが今シーズン初ゴールを決めて1-0で勝利した。しかし、その後は4試合で計10失点を喫し、そのうち8点を後半に入って奪われている。
壮絶なゴールの奪い合いの末に5-3で勝利した、6月30日の名古屋グランパス戦のように痛快な一戦もある。フィンク監督も「失点が多くても、相手より多く得点を奪えば問題ない」と結果を重視する方針を示したが、エスパルス戦とベルマーレ戦では潜在化していた課題が顔をのぞかせている。 「ボールをつなぐチームが相手だと上手くいくこともあるんですけど、前線からプレスをガンガンかけてくるチームと対戦するときに限って、自分たちのよくないところがたくさん出てしまう」 イニエスタとボランチを組む、元日本代表の山口蛍(28)が神妙な口調でチームの現状を指摘した。つなぐチームがグランパスや2-2で引き分けた大分トリニータならば、激しくプレスをかけてくるのがエスパルスであり、ベルマーレとなる。よくないところは何なのか。山口が続ける。 「ポゼッションができる場面でも、(プレスをかけられると)結局ウェリを探して、ウェリを目がけて蹴っちゃう感じになっちゃうので。もちろんウェリのところで収まって、しっかりとつなげればOKなんですけど、全部が全部そうなるわけではない。(状況が)悪くなったらウェリばかりに頼ってしまう傾向は、あまりよくないと思っている」 山口が何度も名前をあげたウェリとは、身長188cm体重90kgの恵まれた体躯を誇るFWウェリントン(31)を指す。空中戦にめっぽう強く、ポストプレーにも長けたブラジル人のストライカーは最前線において頼れる存在となり、相手守備陣の脅威になる。 ゆえに前線から連動したプレスをかけられると、そのプレッシャーに臆する形でウェリントンへのロングパスを選択してしまう。しかし、ロングパスの精度が高く、ウェリントンの体勢も常に十分でなければ、ボールが相手チームにわたるパーセンテージも必然的に高まってくる。 スペイン人の知将、フアン・マヌエル・リージョ元監督を招へいした昨年9月から、ヴィッセルはボールポゼッションを高めるスタイルをより鮮明に追い求めてきた。4月に再登板した吉田孝行前監督体制、そしてフィンク監督に率いられる現体制でも、基本的なコンセプトは変わっていない。 マイボールの時間が長ければ、体力もそれほど消耗しない。しかし、エスパルス戦やベルマーレ戦のように相手のプレスに屈し、自らポゼッションを放棄してしまえば相手の攻撃を受ける回数も増す。ボディーブローのようにダメージが蓄積され、後半になると足が止まる悪循環に陥る。