新監督でも15位後退…イニエスタが「90分間戦いきれない」と語る神戸の苦悩とは何か?
特にベルマーレ戦では、ヴィッセルが放った倍以上となる18本ものシュートを浴びた。後半24分以降の9分間で奪われた3ゴールは、必然の展開と言ってもよかった。すべての局面でパスをつなぐことは不可能でも、それでも成功率が高くはない縦パスは極力選択肢から外したい。 リージョ監督時代は外国籍選手枠の関係で、ウェリントンはベンチにも入れない試合が続いた。しかし、看板のVIPトリオ、ビジャ、イニエスタ、そしてルーカス・ポドルスキ(34)のコンディションがそろわず、誰かが欠場するケースが増えるたびにウェリントンの存在感が増してきた。 同時に相手のプレッシャーにさらされたときにパスをつなぐことを躊躇し、どうしても前方へ蹴ってしまう傾向が最終ライン、特にセンターバック陣に見られるようになった。パスをつなぐのか否か。スタイルを貫き通すのか否か。中途半端なチーム状態が、ベルマーレ戦で露呈したと言っていい。 「守備の面に関しては(最終ラインの)いい組み合わせを見つけるというか、組織として守備をして、今後も上達していかなければいけない」 出場停止だったブラジル人のセンターバック、ダンクレー(27)が復帰する次節の横浜F・マリノス戦以降で、フィンク監督は守るだけでなく、最終ラインからパスをつなぐうえでの最適解の組み合わせを見つけたいと前を向いた。山口も中途半端な状況を、まず一掃したいと力を込める。 「全員がひとつの目標へ向かっていかないといけない。みんなが強い気持ちをもってプレーしないと、すぐにバラバラになってしまうと思うので。まとまったときには試合内容はともかく、結果は必ずついてくる。だからこそ、いまは前を向いていきたい」 今後の対戦相手はベルマーレの戦い方を参考にしてくるだろう。そこで大きく蹴ってしまえば、相手の術中にはまる。ボールポゼッションを高めていくために、既存の戦力でベストの組み合わせが見つからなければ、夏の移籍市場で補強に動くことも考えなければいけないだろう。 フィンク監督が指揮を執ったリーグ戦では、5試合すべてでゴールを奪っている。イニエスタが差配する攻撃は機能している。つまり、失点を減らせば勝利を手にする確率は高まる。J1残留争いに巻き込まれないための処方箋を、いかに実践していくか。残り15試合。ヴィッセルの苦悩は続く。 (文責・藤江直人/スポーツライター)