【高笑いを披露するも…】APEC会談から帰国の石破茂首相を待ち受ける「生かさず殺さず」茨の道
「満面の笑み」の理由
ごくごく一部のファン層から「可愛い」と評される絶妙な笑顔を浮かべる石破茂総理(67)。写真は4日間の会期を終えて11月14日に閉会となった特別国会の本会議で、林芳正官房長官(63)と加藤勝信財務相(68)と語らった際の一コマだ。 【写真】思わず高笑い…!「ハイになった」石破首相 翌15日はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、ペルーの首都リマを訪問。針のむしろと化した国会から逃避できる外遊を想像し、思わず漏れた笑みだったのだろうか。 「笑顔でいられたのは自民党総裁に就任した直後の数日だけでは」 石破総理と時折、電話で話すジャーナリストの鈴木哲夫氏はそう分析する。 5度目の挑戦で総理・総裁の座を掴んだものの、自説を覆して早期解散に踏み切った総選挙で大敗。自民党は少数与党に転落し、衆院予算委員会の委員長には安住淳元国対委員長(62)、憲法審査会会長に枝野幸男元代表(60)が就任。12の委員長・会長ポストが野党のものとなった。 11月28日にも召集される臨時国会では、’24年度の補正予算の審議が始まる。野党の意見も汲みながら国会を運営せねばならず、「政治とカネ」の問題で押し込まれる場面も出てくるだろう。 あくまで議席数のみを考慮した上での話だが、野党がまとまって内閣不信任決議案を可決すれば、石破総理は解散か総辞職を迫られる。 ◆支持率アップという謎 悲観的な要素しかない中、なぜ笑顔を浮かべられるのか。前出の鈴木氏はこう語る。 「石破首相は『一つ一つやっていく、それしかない』と話している。これまでは総理・総裁が『これをやりたい』と政策を掲げれば、関連する議連や議員がすぐに動いたが、党内基盤が弱いので彼の場合は支援が広がらない。 党内で支えようとする動きがない中で、気心が知れた赤沢亮正経済再生担当相(63)、村上誠一郎総務相(72)、中谷元元防衛相(67)らの得意分野である地方創生、経済財政、防災庁設立に着手し、石破カラーを出していくしかない。割り切りというか、厳しい現状を打破するには、できることを一つ一つ積み上げてやっていくしかないという決意をにじませていますよ」 各報道機関が行った世論調査でも、石破氏の笑顔を裏付ける数字が出ている。 読売新聞社が第2次石破内閣の発足を受けて11月11~12日に行った世論調査では内閣支持率は43%で、衆院選直後の前回調査から9ポイント上昇しているのだ。 共同通信の11月世論調査でも、石破内閣の支持率は10月の32.1%から40%に上昇。一方で自民党の支持率は31.8%から30.5%に下落している。自民党には厳しい目が注がれるが、トップである石破氏の支持率はアップしている。この数値をどう読むべきか。 「岸田前政権下で起きた裏金問題への批判で、国民は旧安倍派議員らへ不満を溜めていた。しかし総選挙では彼らの多くが落選した。この状況下で、石破氏には“総理としてもう少し頑張って自民党を変えてもらいたい”というエールが集まっているのではないか」(前出・鈴木氏) ただ、前述したように国会運営は厳しいまま。臨時国会で補正予算案を成立させるには野党の協力は必要不可欠。特に先の総選挙で「手取りを増やす」と掲げ、28議席を獲得した国民民主党の協力を得たいところだ。 ◆野党はどう出るのか 「妙な運というか妙な風が吹いている」 石破政権に対してこう首を傾げるのは、元テレビ朝日政治部長でジャーナリストの末延吉正氏だ。 国会運営の鍵を握る存在となった国民民主党は、玉木雄一郎代表(55)の不倫問題が発覚。玉木氏は代表続投を表明する一方で、問題は長期化しそうだ。 「総選挙直後の『時の人』だった玉木代表なら、自民党側も意向を最大限に汲まねばならなかったが、女性問題でコケたせいで国民民主側も強く出られなくなった。思い出されるのが、渡辺喜美元行革担当相(72)が率いて第三極として一定の光を放った『みんなの党』。安倍政権下で、予算案などで与党寄りの姿勢を見せたところ党内が分裂し、解党となった。国民民主党がみんなの党と同じ轍を踏まなければいいが」(末延氏) 自民党内でも「石破おろし」の風は吹いていない。旧安倍派の青山繁晴参議院議員(72)が「総選挙大敗の責任をとって即、辞任をすべし」と吠え続けるも、後が続かない。自民、公明の与党が衆院で過半数割れしている状況でトップを変えたところで事態は打破できず、「誰が首相をやっても同じ」という消極的な容認論が広がっているのだ。 「自民党内では高市早苗元経済安保担当相(63)ら、総裁選で石破氏と争った主要候補が力を落とし、積極的に戦う姿勢をみせないことで気勢が上がらない。 野党は石破政権に退陣を迫るでしょうが、本音では来年7月の参院選で勝つために“パッとしない石破政権に直前まで存続してほしい”と考えている。下手に総裁を変えられて支持率を回復されるよりも、攻めどころ満載の現政権のほうが対峙しやすい。生かさず殺さずの国会運営で、石破政権の延命のアシストをしかねないとみられます」(末延氏) 政権運営がいきなり泥船化した結果、与野党が揃ってまさかの静観をする状況となっている。指導力のあるリーダーを求める国民にとっては、笑えない政治状況が続く可能性が高い。 取材・文:岩崎大輔
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