やり投げ北口榛花の願い「日本でも満員のスタジアムで競技を」 9月に世界陸上東京大会
東京に陸上の世界選手権が帰ってくる。国内3度目の開催となる今大会は9月13~21日の9日間、49種目で熱き戦いが繰り広げられる。前回ブダペスト大会覇者で、昨年のパリ五輪女子やり投げの金メダリスト、北口榛花(JAL)は再び頂点を目指し、国立競技場のピッチに立つ。新型コロナウイルス禍により、ほぼ無観客で開催された2021年東京五輪から4年。熱狂を取り戻したスタジアムで投じるやりは、どこまで伸びるだろうか-。 ■コロナ禍の東京、大歓声のパリ キャリアの絶頂期に向かう北口に、願ってもない舞台だ。世界選手権の国内開催は2007年大阪大会以来、18年ぶり。「自分のキャリアの中で日本のファンが一番見に来てくれる大会になると思う。思い出に残る1年にしたい」と意気込む。 これまで、北口にとって母国で開かれた世界大会は21年東京五輪が唯一。決勝に進出するも、12人中12位に終わった。予選後に発症した脇腹痛が影響し「ただ痛かった、で終わってしまった」。 結果以外の物足りなさも記憶に残っている。満員になるはずだった国立競技場の観客席には関係者のみ。「あんなに大きいスタジアムで観客席に人がいないのは寂しかった」と振り返る。 コロナ禍が明け、北口は飛躍した。23年の世界選手権ブダペスト大会を制し、24年はパリ五輪で金メダルを獲得。歓声がこだまする満員のスタジアムで世界の頂点に立った。「昔は緊張するから誰も私のことなんか見ていないと思って投げていた。でも今は違う。一度経験してしまったら、やっぱり日本でも満員のスタジアムで競技をしたい」。東京五輪で見られなかった光景を目の当たりにすることを待ち望んでいる。 ■明かした苦悩 昨年12月19日、日本陸連アスレティックス・アワードの授賞式でのスピーチ。2年連続の最優秀選手賞を受賞した〝晴れの場〟で、北口は「できれば、このような1年はもう二度と来なくていいと思うくらいの1年でした」と苦悩を明かした。五輪金のほか、世界最高峰のダイヤモンドリーグの上位者で争うファイナルも2連覇。はたから見れば順風満帆の1年にも見えるが、北口にとっては違った。 冬季練習で筋力強化に励んだ反動で、強みである柔軟性が失われた。4年に1度の五輪イヤーに合わせ調子を上げる海外勢とは対照的に、自身の投げはなかなか仕上がらなかった。五輪も何とか調子を合わせたというのが、北口の率直な感想だ。