【海外トピックス】立て直しをはかるメルセデス、勢いに乗るBMW。独プレミアムブランドの明暗
全ての主要市場で販売台数を落としたメルセデス・ベンツ
前回はアメリカのGMとフォードの2024年上半期決算発表の内容を見ましたが、今回はドイツのプレミアムカーの両雄メルセデス・ベンツとBMWの上半期決算発表からわかることを紹介します。コロナ禍や半導体不足から回復して好調だった前年と比べると市場競争は激化し、電動化やデジタル化への投資が嵩む厳しい経営環境下で、ドイツ高級車のライバルの明暗は分かれているようです。 【写真】メルセデス・ベンツとBMWの業績を数値表などで見る まずメルセデス・ベンツ(乗用車)は販売台数、売上高ともに前年同期比5%以上のマイナスとなって厳しい状況です。欧州、中国、米国の主要市場全てで販売台数を落としており、特に本国ドイツは-16%、最大市場の中国でも-8.8%と苦戦が目立ちます。営業利益(EBIT)も-35%となっており、特にトップエンドモデル群の販売が-22.5%でモデルミックスの悪化が響いています。SクラスやEQSを生産する最新鋭の独ジンデルフィンゲン工場の生産を秋から一直に減らすという事態となっており、2026年までにトップエンドモデルの比率を60%増加(2019年比)するという目標を達成できるかは、フロントデザインをエンジン(ICE)車風に手直ししたEQSや来年部分改良予定のSクラスが勢いを取り戻し、エレクトリックGクラスやAMGモデルをさらに拡販できるかにかかっています。 アナリストとの質疑応答では、知的で温厚なオーラ・ケレニウスCEOが、時に市場競争の厳しさや不確定要素について「不合理な(irrational)」という言葉を口にするなど、ラグジュアリーブランドとして長年君臨してきたメルセデス・ベンツでさえ、目下の厳しい市場環境と変革の渦中で困難に直面していることを窺わせました。 同社は、2030年までに新車販売を全てEVに転換するという目標を今年の初めに取り下げ、市場が要求する限りICEモデルも刷新し続けるという方針に転換しており、今後もMB.OSなどのソフトウェアの進化をICEにも反映していくと表明しました。また2025年からは、次世代のMMA(メルセデスベンツ・モジュラー・アーキテクチャ)を採用したコンパクトクラスのEVであるCLA(セダン)や同SUVが導入されますが、MMAは性能を大幅に向上させたEVとICE車のどちらにも対応しています。さらにその後、MB.EAと呼ばれる次世代中型EVプラットフォーム上に設計されたGLAやCクラスが登場し、この先2~3年で中核製品が一新されていく予定です。