【海外トピックス】立て直しをはかるメルセデス、勢いに乗るBMW。独プレミアムブランドの明暗
変革へのハイレベルの投資と株主還元で利益は圧迫
ドイツの自動車産業については、VWグループも、研究開発費や設備投資が売上高の14%を超えて利益を圧迫しており、EVについても、VWのI.D.シリーズの販売減速、アウディが発売して間もないQ8 e-tronを生産するブリュッセル工場の閉鎖を検討するなど厳しい状況が続いています。2021年には世界で6箇所建設するとしたバッテリー生産工場も当面ドイツ、スペイン、カナダの3箇所で十分と軌道修正するなど、EVへの大胆なシフトを想定した戦略の見直しに取りかかっています。 世界最大の中国市場の減速と構造変化(中国メーカーの躍進)、欧米の需要の頭打ち、EVやデジタル化への投資の負担など、どのメーカーも生き残りをかけた戦いの最中にあります。経営者は株式市場からEBIT 10%を超える高い利益率を求められていますが、配当や自社株買いで30~40%の株主還元も実施しており、利益率を圧迫しています。ほんの5~6年前は盤石と思われたドイツのプレミアム自動車メーカーでさえも、最大市場の中国の激変と100年の一度の大変革の波に遭遇して、懸命にトランスフォーメーションを成し遂げようと苦闘している様が伝わってくる会見でした。(了) ●著者プロフィール 丸田 靖生(まるた やすお)1960年山口県生まれ。京都大学卒業後、東洋工業(現マツダ)入社。海外広報課、北米マツダ(デトロイト事務所)駐在をへて、1996年に日本ゼネラルモーターズに転じ、サターンやオペルの広報・マーケティングに携わる。2004年から2021年まで、フォルクスワーゲングループジャパン、アウディジャパンの広報責任者を歴任。現在、広報・コミュニケーションコンサルタントとして活動中。著書に「広報の極意-混迷の時代にこそ広報が活躍できる」(2022年 ヴイツーソリューション)がある。