【海外トピックス】立て直しをはかるメルセデス、勢いに乗るBMW。独プレミアムブランドの明暗
世界販売比率35%の中国市場で踏みとどまれるか
オンライン会見では、中国市場に関して「価格競争に巻き込まれずに耐えられるか」「他の輸入車メーカーのように構造的な事業再編が必要ではないか」といった質問が繰り返されましたが、ケレニウス氏は、中国市場全体について以下の3つの見方を示しました。 1.激烈な技術転換の競争(EV化、デジタル化)の渦中にあるが、これには食らいついていかねばならない。 2.経済は特に不動産市場の不況によって消費者の購買意欲が下がっており、近い将来好転するとは思えない。価格と販売台数のバランスをとりながら、値下げ競争からは一線を画したい。 3.中国には100社を超えるEVメーカーがあるが、その9割以上は赤字だ。これらが淘汰されるのにどのくらい時間がかかるかまだ分からない。合弁事業の再編といった構造的な対応をまだ決断できる段階ではない。 さらに、中国のEQSの顧客の「唯一クルマ酔いしないEVだから購入した」というコメントを紹介しつつ、ドライブトレインとシャシーのバランスなどメルセデス・ベンツが培ってきた技術や商品力が必ず理解されるはずだ、とマーケットの防衛には自信を示しました。
BMWの業績は好調な上級モデルとEVが牽引
一方のBMWは、同様に厳しい市場環境と変革への投資の渦中にありながらも、高く評価できる決算を示しています。販売台数はモデル切り替えの狭間で-18%となったMINIをBMWブランドがカバーして前年と遜色なく、売上高は微増しており、どちらもメルセデス・ベンツ(乗用車)を上回りました。本国ドイツの販売は横ばい、中国も-4%に減少をとどめており、米国販売は+1.4%でメルセデスとの差を広げています。 EVは、BMW(含MINI)が19万台(+24%)と9万3000台(-17%)のメルセデスの倍以上を販売しており、この点はEV専用のEQシリーズに舵を切ったメルセデスと、同一プラットフォームとボディスタイルでICEもPHEVもBEVも展開する「フレキシブル・パワートレイン戦略」をとったBMWとの間で明暗が分かれた形です。両社ともに、MMAとノイエ・クラッセという新世代のEVプラットフォームを来年以降導入するので、この勝負がどうなるかも注目されます。ちなみにBMWは、7月の欧州市場でのEV販売台数(14,869台)で王者テスラをわずかに上回りトップに立ちました。