【海外トピックス】立て直しをはかるメルセデス、勢いに乗るBMW。独プレミアムブランドの明暗
BMWは2025年のCO2規制を余裕でクリア
BMWは、第2四半期ではEVで17.4%、PHEVを含む「x EV」で24%のEV化率を達成しており、2025年から1キロメートル走行あたり93.6g(WLTPモード)と15%以上厳しくなるEUのCO2排出量規制も十分クリアできる見込みです。来年末から登場するノイエ・クラッセは同社の金看板である3シリーズやX3のセグメントの車種になります。これが成功するかどうかは、正に同社の将来を決すると言えますが、今のところ、BMWの顧客は選択肢を備えた同社の電動化戦略に安心感を持っているといえそうです。(メルセデスのケレニウスCEOは、2025年のCO2規制について、場合によっては他社とタッグを組むプーリングが必要になるかもしれないと示唆しました。同社のx EV比率は18%にとどまっておりEVとPHEVの台数はほぼ半々なので、達成はそう容易ではないかもしれません) BMWは、価格維持に関しても自信を持っており、平均販売価格が約51,000ユーロ(約816万円)と昨年から安定している模様です。中国については、セグメントシェア5%の50万元(1000万円)以上の市場が今年-5%と減少している中で、BMWは逆に+3%と販売を伸ばしており、好調なX5や7シリーズに加え今年後半から現地生産の新型5シリーズがフルに寄与することにより増販を見込んでいます。また、米国の在庫は31日分で業界平均(55日)より大幅に少なく、インセンティブを多く費やす必要はないようです。 オリバー・ツィプセCEOの口調からは、BMWは独自の判断とリスク管理によって、(名指しはしませんが)ライバルのように性急なEVシフトで翻弄されることなく、またサプライチェーンのボトルネックの影響も受けずに順調に変革の流れに乗っているという自負が感じられました。
e-fuelや低炭素燃料を後押し。中国製EVの関税には反対
トヨタともZ4/スープラの共同開発や水素燃料電池車で協力関係にあるBMWですが、ツィプセ氏は、かねてよりEUの決めた2035年のICE車販売禁止を批判しており、今回の決算会見でも冒頭のスピーチの中でこの主張を繰り返しました。さらに、「EUはe-fuelを認めることでICE車禁止の偽りの逃げ場を作っているが、もっと真剣にe-fuelやE25(エタノール25%混合ガソリン)、HVO100(※1)などの開発を進め、新車だけでなく2億5000万台の欧州の既存の自動車が排出するCO2を削減する手段を進めるべき」と低カーボン燃料の普及の必要性を強調しました。※1:水素化植物油(HVO)は、再生可能な廃棄物の脂質を処理することで化石資源なしで生産できるディーゼルのような燃料を指す。 また、EUの発動した中国製EVへの追加課税にも改めて反対を表明し、「EVのサプライチェーンを欧州域内に構築するにもバッテリーの材料は中国に頼らざるを得ず、最大37.5%もの追加関税は報復措置を呼び、自由貿易を阻害して結果的に欧州のEV普及を遅らせる」「BMWもMINIのEVなどを輸入しており、関税はせいぜい10~15%、理想的にはもっと下げるべきだ」と主張しました。なお最近の報道によると、EUはテスラの関税を9%に、ボルボやポールスターを輸入する吉利汽車やBMWの輸入EVの追加関税もそれぞれ19%と21.3%に若干下げる見込みです。実際、追加関税の仮施行を受けて、6~7月の欧州市場での中国製EVの販売シェアは減少しています。