欧州各国の実質GDP成長率は上向きなのに、失業率が高め そのからくりは?
スペイン・カタルーニャ州の独立問題など政治面では、様々な困難に直面している欧州(本稿ではユーロ圏を指す)ですが、実のところ経済面はすこぶる好調です。 10月31日に発表されたユーロ圏の7-9月期実質域内総生産(GDP)成長率は前期比+0.6%、同年率+2.4%でした。前期比年率の成長率が2%を超えるのは4四半期連続でこれは10年ぶりの快挙です。ユーロ圏経済の「本来の実力」を示す潜在成長率は1%程度と推計されていますから、それを明確に上回っています。景気の肌感覚は人それぞれ基準が異なりますが、客観的基準では好景気というわけです。
そうした景気の強さを象徴しているのはドイツの企業景況感です。域内最大のドイツ経済は内需と外需がともに順調な拡大基調にあり、そうした下で企業景況感指数(Ifoという機関が集計したもの)は1970年の統計開始以来の最高水準に到達しています。その他にもドイツ経済の活況を映し出している指標が数多くあり、域内経済の成長に大きく貢献している様子が見て取れます。 景気が良いのはドイツだけではありません。そこで国別の実質GDP成長率をみると、押し並べて成長が上向いていることがわかります。域内2番目の規模を誇るフランスが景気回復の波に乗っているほか、2010から12年頃まで欧州債務問題の渦中にいたイタリア(3番目の経済規模)、スペイン(4番目)も明確に基調が反転しています。スペインは、最近のカタルーニャ州を巡る混乱をみていると、あたかも経済の悪さが背景にあるように思えますが、この2年程度に限って言えば、ドイツ以上の成長軌道にあります。このように目下の欧州経済はドイツだけでなく、フランス、イタリア、スペイン、オランダなど広がりを伴っているという点で好感されます。
最後に失業率に目を向けると、最新の数値は9%程度です。最悪期には12%を超えていたのでそれに比べると改善が顕著ですが、それでも3%未満で推移する日本のそれと比べて遥かに高い水準にあり、景気回復の恩恵が労働市場に波及していないようにみえます。