欧州各国の実質GDP成長率は上向きなのに、失業率が高め そのからくりは?
しかしながら、ここで注意が必要なのは欧州の失業率は構造的に高いということです。理由としては、一般的に(1)失業給付の水準が高く期間も長いことから長期失業者が多く存在すること、(2)解雇規制が厳しく労働者を保護する慣行が強いことから、好景気になっても企業が直ちに従業員の採用を積極化しないこと等が指摘されています。失業率9%は一見すると高いですが、目下の水準は約9年ぶりの低さで、かつ長期平均を下回っていますから、欧州経済の強さを語るには十分というわけです。
欧州経済は、しばしば日本経済の回復を脅かす要因として挙げられていますが、その成長軌道は今や先進国で優秀な部類と言えます。債務問題のイメージが強烈だったこともあって欧州経済の弱さが人々の印象に定着してしまった感がありますが、目下の状況を見る限り、さほど心配は要らないように感じられます。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。