不安で眠れず夜中の3時に素振り・張本勲さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(34)
ホームラン打者はね、王みたいに集中力と忍耐なんですよ。ストライクでもホームランにできるような球じゃなければ平然と見逃さなきゃ駄目。逆にピッチャーは、それがまた怖いんですよ。怖いから失投が多い。王がヤクルト戦で3回歩かされてね、4打席目に3ボール1ストライクからホームラン打ったことあるんですよ。大したもんだなと思いましたね。後で聞いたら「ずっと待ってたんだ」と。落合は違うわな。落合はどのコースでも打てるから。(本拠地が両翼の狭い)川崎球場だからね。こつを覚えて近めの球を右の方へしゃくり上げて何本もホームランを打ちましたから。バットがむちのようにしなっていく。プロ野球に入ってから変えてるからね。王は一本足にしたし、落合も最初はあんな格好はしていなかった。ピッチャーが球種を覚えるように(打者も)相手のピッチャーに対応できるような形、技術、体力を身に付けないと。 ▽投手に不利な対決をさせては駄目
昔は3割バッターと言ったら、シーズンオフは肩で風を切って歩いてました。3人か4人しかいなかったものね。球があんまり飛ばないし。今は飛び過ぎる。なぜかと聞いたら、やっぱりメーカーがいいですね。本当に上手に作るそうですよ、アメリカの会社よりも。(糸を巻き付けて作る硬球の芯は)昔は手巻きで、今は機械でぐぐっと締まるから。アメリカが飛ぶボールを使いだしたからね。宣伝してるんですよ、ホームランを。一時は面白いけども野球が駄目になる。それこそピッチャーは大変。今は14、15勝で最多勝ですよ。打高投低で、全てバッター有利です。 逆に言うと、こんなにひきょうな競技はない。人工芝、ドームで乾いている、球は飛ぶ。こんな不利な対決させちゃ駄目ですよ。平等な野球をさせてあげないと。ボールを規制するか、ホームベースの両側をボール半個分ずつ広げるか、あるいはマウンドを一律で高くするか、何かやらないと、平等じゃないでしょ。あなたの息子がピッチャーなら嫌なもんでしょう? 年中、打たれてね。こすった打球がホームランになるんだもん。話にならんよ。