市和歌山、逃げ切り8強 智弁和歌山、強打で圧倒(その1) /和歌山
<センバツ2019> 28日のセンバツには県勢2校が出場し、ともに勝利を飾った。出場32校中、1回戦最後の登場となった智弁和歌山は、21世紀枠の熊本西を持ち前の強打で圧倒し、13-2で快勝。初めて甲子園で采配(さいはい)を振った中谷仁監督は初勝利を挙げた。2回戦の市和歌山は打線がつながって高松商(香川)に6-2で勝ち、1967年第39回大会以来52年ぶりにベスト8に進んだ。智弁和歌山は大会第8日第3試合(30日午後2時開始予定)の2回戦で啓新(福井)と、市和歌山は第9日第1試合(31日午前8時半開始予定)の準々決勝で習志野(千葉)と、それぞれ対戦する。 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 ◇高松商に6-2、序盤から応援熱気 ▽2回戦 高松商(香川) 000002000=2 12030000×=6 市和歌山(和歌山) 市和歌山は序盤から優位に立ち、アルプス席では熱のこもった応援が繰り広げられた。一回、緒方隆之介選手(3年)が、「かっとばせ、かっとばせ、ホームラン」という応援曲の歌詞に乗せられるように本塁打を放ち、スタンドは一気に盛り上がる。母真須美さん(44)は「『次は頑張る』というLINEの宣言通りだ」と喜んだ。 この日、初スタメンの壱岐有翔(ありと)選手(2年)が二回2死一、二塁の好機に中越え二塁打で2点を加える。父有宏(なりひろ)さん(46)は「感無量。このまま勝利につながれば」と拍手を送った。 先発の柏山崇投手(3年)は中盤、相手に走者を三塁に進められながらも要所を締めて得点を与えない。しかし、六回、連続四球と連打を許し、マウンドを降りた。父淳さん(47)は「本人も満足はしていないはず。4番打者として安打を打ってほしい」と願った。 救援の岩本真之介投手(2年)は打たせて取る投球。九回2死満塁のピンチでは、スタンドから「あと一個!」とアウトを願う声援が上がった。ライナー性の当たりを中堅の片上柊也選手(3年)が好捕し、応援団は大歓声に包まれた。選手の保護者や生徒たちは「やったー」と跳び上がって喜びを分かち合った。【後藤奈緒】 ◇けがから復帰、2安打の活躍 市和歌山・山田佳吾選手(3年) 6番打者として臨んだこの日は2安打を放つ活躍を見せた。1点リードの二回、左前打で出塁して下位打線の2安打で本塁に還り、貴重な追加点を挙げた。四回には無死一塁から右前打で好機を広げると、相手守備の乱れを突き、5点目の本塁を踏んだ。 昨年8月の練習中に左肩を2度脱臼した。再発防止のため翌9月に手術に踏み切り、しばらく試合に出場できなかった。医師からは「復帰は4月」と言われ、「焦りもあった」と振り返る。 しかし、半田真一監督から「早く戻ってこい」と激励を受け、発奮。早期に復帰したい一心で、リハビリを1回多い週3回に増やし、肩周りの筋肉も鍛えて予定より大幅に早い1月下旬に復帰した。 23日の開幕試合では「大きな舞台に立った時のピリピリした緊張感がたまらない」と重圧を力に変え、5打数3安打と活躍。2戦目となった高松商戦は「リラックスして臨むことができた」と頼もしさを感じさせる。 「けがでチームに迷惑をかけてきたので、貢献できてうれしい」。2試合連続の活躍に表情を緩めた。【後藤奈緒】 ◇熊本西に13-2 中谷監督、甲子園初勝利 ▽2回戦 智弁和歌山(和歌山) 004702000=13 010010000=2 熊本西(熊本) 1点を先制された直後の三回、綾原創太選手(2年)が四球で出塁すると、上位打線の4連打で一気に4点を奪って逆転した。右前に勝ち越し打を放った黒川史陽(ふみや)主将(3年)の父洋行さん(43)は「まだ選手たちが固い感じがするが、逆転してくれて良かった。これでリラックスできると思う」と見守った。 続く四回は、2死一、三塁から西川晋太郎選手(3年)が2本目の適時打で追加点を奪うと、さらに一、三塁と攻め立て、4番・東妻純平選手(3年)が左翼席へ大きな放物線を描く3ラン。アルプス席は最高潮の盛り上がりを見せ、「いいぞ! いいぞ! 東妻」と大きなエールが送られた。 六回にもチームのムードメーカー、佐藤樹選手(3年)が適時打を放つなど2点を追加。父元信さん(53)は「うれしいけど、甲子園に出られてうらやましい」と活躍に目を細めた。 先発の池田陽佑投手(3年)は先制点を許したものの四回まで安定した投球を披露。五回からマウンドに上がった池田泰騎投手(2年)が3イニングを1失点にまとめると、八、九回は山本雄太投手(3年)、小林樹斗投手(2年)が0点に抑え試合を締めくくった。試合後、池田陽投手は「中谷監督に1勝をプレゼントできてうれしい」と話した。【砂押健太】 ◇自分の壁超えた三塁打 智弁和歌山・硲(はざま)祐二郎選手(3年) 四回表、この回2度目の打席に入ると、右中間へ2点適時三塁打を放ち、ベンチに向かって大きくガッツポーズした。チームの勝利に貢献し、「打てて一安心」とほっとした表情を見せたが、「次もしっかりボールを見極め、つなぐ打撃を意識したい」とすぐに次戦を見据えた。 中3の時に膝にけがをして、高校1年の冬まで満足に練習に参加できなかった。昨春のセンバツはベンチ入りできず、ボールボーイとして仲間の準優勝を見守った。喜びと同時に感じた自分のふがいなさを胸に黙々と練習に励み、この冬、ようやくレギュラーの座をつかんだ。 マッサージのケアなど献身的に支えてくれた家族に、フルスイングしているところを見せたいと臨んだ初めての甲子園。アルプス席から活躍を見守った母由美さん(47)は「壁にぶつかったからこそ、今がある」と目を潤ませた。 チームの目標は、昨年成し遂げられなかった優勝。「自分の一打で勝利に貢献することが一番の目標」。次も攻守でチームを盛り立てるつもりだ。【砂押健太】