【陸上】高校100m史上初の「10秒2台決着」西岡尚輝が高校歴代3位10秒21でV!アブラハム10秒29 4継は洛南39秒86、京都橘45秒87/IH近畿
◇インターハイ近畿地区大会(6月13~16日/大阪市・ヤンマースタジアム長居、ヤンマーフィールド長居)2日目 男子100m高校歴代をチェック! 季節外れの暑さを吹き飛ばす“疾風”が駆け抜けていった。福岡インターハイを懸けた近畿地区大会の2日目が行われ、初日同様、天候にも恵まれて好記録が続出した。なかでも注目を集めたのが、近畿最速の座を争った男子100m。全国リストでも上位につける強豪が顔をそろえた決勝は、かつてないほどの白熱したレースとなった。 好スタートから飛び出したのは西岡尚輝(東海大仰星3大阪)。5月の大阪府大会準決勝で10秒29(+0.5)、この日の準決勝でも後半余力を残して10秒39(-0.5)をマークするなど、好調さをうかがわせていた。 「大阪大会では決勝で負けていたので、近畿では絶対に優勝するという気持ちで、準決勝まで余力を残して決勝に照準を合わせてきました」と言う西岡は、「決勝は得意のスタートが決まり、うまくリズムに乗ることができました」。 後半は、大阪府大会決勝で西岡を逆転して優勝を飾ったアブラハム光オシナチ(東大阪大柏原3)が迫る。西岡は「最後の最後までアブに抜かれるか心配でした」と振り返りつつも、実際のスプリントは最後まで崩れなかった。「いつも以上に最後まで冷静に走り切れました」と、ライバルの猛追を凌いでフィニッシュ。電光掲示板には西岡のレーンを示す「7」に続き「10秒21」の速報タイムが映し出された。高校歴代3位、U20日本歴代5位タイの快記録。しかも、向かい風0.4m。普段はあまり見せない力強いガッツポーツで喜びを表現した。 昨年もこの近畿を制して全国切符をつかんだものの、リスト上位で迎えた本番はコンディションが整わず棄権。秋の国体もアブラハムに代表を譲っている。その苦い経験を生かし、「この冬は吐くぐらいに追い込んで練習してきました。体力もつき、自信を持ってレースに臨めるようになりました」と今回の好走につなげた。 高校歴代で10秒01の桐生祥秀(洛南・京都/現・日本生命)、10秒19の黒木海翔(東福岡/現・中大)に次ぎ、10秒22のサニブラウン・アブデル・ハキーム(城西・東京/現・東レ)、栁田大輝(東農大二・群馬/現・東洋大)を上回る位置に浮上した。「タイムには少し驚いていますが、レベルの高いライバルがいるから自分もここまで成長できました。ここから記録を短縮していくのは簡単ではないと思いますが、インターハイでは、10秒1台で優勝することが目標です」と力強く話した。 2位に敗れたものの。アブラハムも高校歴代12位タイ、U18日本歴代5位タイとなる10秒29の自己ベスト。高校生が同一レースで2人10秒2台をマークするのは史上初という超高速バトルの一翼を担った。「中間走からのつなぎが今一つだったぶん、追いつけませんでした。負けたのは悔しいですが、10秒2台でも勝てない高いレベルでみんなと競い合えたのは、すごく楽しかった。インハイでは今日よりもっといいレースをして、リベンジしたいです」。悔しさをにじませつつも、納得の表情で話した。 3位には年綱晃広(滝川二3兵庫)が10秒43で続いた。準決勝で向かい風のなか、自己ベストに100分の1秒と迫る10秒41(-1.9)をマーク。2週間前の兵庫県大会2冠の流れを継続し、キレのある動きを見せていた。「上の2人に引っ張ってもらってベストを更新したかったですが、少し力んでしまいました。インターハイでは全中1位のプライドを懸け、今回負けた2人に挑みたい」とリベンジを誓った。 4位の村松悦基(洛南3京都)が10秒47、5位の増山煌冨(比叡山3滋賀)が10秒50、6位の島田絢都(比叡山2滋賀)が10秒67。地区大会とは思えないインターハイ本番さながらのハイレベルなレースだった。 前日の準決勝から快記録続出だった男子4×100mリレーは波乱の展開に。そのレースを制したのは全国を幾度となく制した実績を誇る洛南だった。 準決勝で40秒25の好タイムを出した比叡山が1、2走で、さらに準決勝で高校歴代2位、大会新の39秒48を叩き出した東海大仰星が2、3走間のバトンパスにミスが出て後退。そんな中でも、1走・安川飛翔(2年)、土城隼磨(3年)、村松、末武勇樹(3年)が盤石のリレーを見せ、39秒86で3連覇を達成した。 2位は関大北陽(大阪)で40秒76、3位は社(兵庫)で40秒79。東海大仰星はアンカー・西岡が猛烈な追い上げを見せたものの、6位と0.21秒差の41秒86で7位となり、インターハイ切符をつかめなかった。 女子4×100mRは全国連覇を目指す京都橘(京都)が、今季チーム初の45秒台となる45秒87で2連覇を飾った。同100mは仲埜心葉(市西宮3兵庫)が自己ベストを0.07秒短縮する11.76(+1.3)で快勝した。 男子砲丸投はアツオビン・アンドリュウ(花園3京都)が16m82で制し、前日のハンマー投との2冠を獲得。男子八種競技は石本澄空(鳥羽3京都)が京都府大会で出した高校歴代6位の自己記録を40点更新する5996点と、大台にあと一歩と迫った。 男子棒高跳は前回1位タイだった長野董也(王寺工3奈良)が自己記録を8㎝更新する5m10をクリアし、堂々の連覇達成。男子走幅跳は藤本涼哉(小野3兵庫)が最終6回目に7m54(+0.1)をジャンプして逆転優勝を飾った。女子フィールドでは園田学園(兵庫)勢が2種目を制覇。走高跳は野田瑚羽(3年)が自己タイの1m71、やり投は本多七(2年)が自己新の47m84でそれぞれ優勝した。 男女1500mも高速レースに。男子は最初の400mを57秒で突っ込んだ川口峻太朗(洛南3京都)がそのまま逃げ切り、3分47秒88でV。高1歴代6位の3分49秒72をマークした梅田大陸(須磨学園・兵庫)が6位と、インターハイ出場権を巡る争いは熾烈を極めた。 女子は久保凛(東大阪大敬愛2大阪)が自己新の4分19秒11で1冠目。明日からは、昨年のインターハイで1年生優勝を果たした800mに挑む。また、2位の池野絵莉(須磨学園2兵庫)が4分19秒44、3位の大川菜々美(和歌山北2)が4分19秒51と、2年生3人が4分20秒切りの好タイムを出した。
花木 雫/月刊陸上競技