ストレス緩和・幸福感・ダイエット。「愛情ホルモン」オキシトシン欠乏チェック!
最近、ストレスケアなどで注目されているキーワード、「オキシトシン」をご存じですか? 脳で作られるホルモンで、分泌されると優しい気持ちや幸せな気分になるため、「愛情ホルモン」とも呼ばれます。「思いやりホルモン」「幸せホルモン」「ハッピーホルモン」「絆ホルモン」「恋愛ホルモン」など、ほかにもさまざまな呼び名を持っていますが、好きな人とスキンシップしたり、親しい友人と楽しくランチしたりしているときに幸せを感じるのは、このオキシトシンの効用。 【画像】メンタルヘルスを整えるアイデアまとめ でも愛情や幸福感といったメンタルに関する働きだけでなく、実はもっと多彩なすばらしい効果を発揮することが、近年、多くの研究の結果、解明されているのです。
オキシトシンはただの「愛情ホルモン」じゃなかった!
オキシトシンはこれまで、おもに育児のとき、母乳を出すためにお母さんの脳内で作られるホルモンであるとされていました。母子のスキンシップによって生まれる物質と考えられていたようです。それが、オキシトシンについての研究が進み、母子間以外の触れ合いによっても分泌されることがわかってきました。 「オキシトシンに関する論文は、ここ5年ほどで急激に増え、その数は実に3万報に上ります。これは、ほかのホルモンの論文とは比較にならないほどの多さです」。そう教えてくれたのは、メンタルヘルスの予防や治療における食事の大切さを訴えている精神科の医師、奥平智之先生。 「オキシトシンは、うれしい、楽しい、気持ちいいと感じたときに脳内で分泌されますが、それだけでなく、オキシトシンが増えることで、さらに優しい気持ちになったり、ストレスが緩和されたり、情緒が安定したり、さらには食欲が抑えられたりといった多様な効用があることが報告されています。オキシトシンがたくさん分泌されている人は、例えば人間関係が厳しい職場で働いていても、比較的ストレスを感じないですむかもしれません」
オキシトシンには、こんな“ステキ効果”が!
奥平先生によれば、さまざまな論文から読みとれるオキシトシンの効果はおもに以下の6つ。いずれも、現代の社会生活において重要なものばかり。オキシトシンが多い人ほど、心身ともに健康かつハッピーで、まわりの人にもいい影響を与えられることがわかります。 【オキシトシンの6つの効果】 1.愛情・恋愛・信頼関係が充実する オキシトシンは、「愛情ホルモン」という呼び名のとおり、愛情や人間関係の絆、親近感、信頼に関係するだけでなく、誰かに恋したり、抱きしめたり、性的興奮を感じたときにも増加するため、恋愛ホルモンとも呼ばれます。オキシトシンによって男性は男性ホルモン(テストステロン)が、女性は女性ホルモン(エストロゲン)が上昇。女性の場合は母性的な気持ちになったり乳房が大きくなったりし、男性の場合は筋肉や骨の増強、射精や勃起などに関係します。また、愛情深い母性・父性行動にもかかわり、パートナーに忠実になったり、浮気を防止したりするといった意外な効果も! 2.幸福感が高まる オキシトシンは、同じく脳内で分泌されるセロトニン(幸せホルモン)、ドーパミン(ときめきホルモン)、β-エンドルフィン(快楽ホルモン)、GABA(リラックスホルモン)を増やす働きがあります。これらがたくさん分泌されることで不安や寂しさが減り、リラックスしてゆったりした気持ちに。オキシトシンが幸せホルモンとも呼ばれるのはこのためです。 3.ダイエット効果 オキシトシンには食欲を抑制する作用もあることがわかってきました。特に甘いもの、糖質への渇望(「食べたい!」という気持ち)が抑えられます。また、エネルギー消費を増やし、筋肉や骨を作る、脂肪を減らす、胃腸のぜん動を助けるなどの働きにより、太りにくくなることも期待できます。 4.出産・母乳の産生 赤ちゃんが乳首を吸うと、その刺激でオキシトシンが分泌され、母乳が放出されます。赤ちゃんが乳首を吸っているあいだ脳はオキシトシンを分泌しつづけるため、授乳が母親の愛情や幸福感につながります。また、子宮の収縮(陣痛)にも重要なホルモンで、出産時、分娩中に子宮頸部や子宮が伸びることでも分泌されます。同時に、オキシトシンには抗炎症・抗酸化・鎮痛・創傷治癒作用があるため、出産時の痛みの軽減や傷の回復のほか、膣粘膜の若返りも期待できるのだそう。 5.免疫力の向上 オキシトシンには免疫を調整する作用、抗ウイルス作用があるとされ、新型コロナウイルスの侵入を防ぐサポートもしてくれます。一方、新型コロナウイルスに感染すると体内で炎症や活性酸素などが発生し、これに対処するためにオキシトシンの必要量が増え、オキシトシンレベルが低下する可能性も。オキシトシンを増やしておくことはコロナ感染対策にもなるといえるでしょう。 6.ストレスの緩和 オキシトシンには、体に対するさまざまなストレスを軽減してくれる作用があります。例えば、抗酸化・抗炎症の作用によって体のストレスを減らしたり、β-エンドルフィンという鎮痛ホルモンを増やして痛みのストレスを緩和したり。また、副交感神経を優位にしてリラックス状態に導いたり、メラトニン(おやすみホルモン)の分泌を促したりして睡眠の質を維持する効果もあります。逆に、ストレスがあるとオキシトシン分泌が抑制されてしまうという側面も。