ラッセル悲劇の失格。原因として疑われるタイヤの摩耗……1.5kg分も削れてしまうことなんてあるのか? ピレリF1責任者が解説
F1ベルギーGPの決勝レースでトップチェッカーを受けたメルセデスのジョージ・ラッセルは、フィニッシュ後の重量計測でマシンがレギュレーションで定められた最低重量を満たしていないことが発覚。失格処分となった。 【リザルト】ラッセルまさかの失格! F1ベルギーGP決勝レース結果 メルセデスのチーム代表であるトト・ウルフは、ラッセルの重量不足について「彼は1ストップだった……だからタイヤのゴムがかなり減るかもしれない」と語っていた。 ただ長い距離を走ったからと言って、重量が軽くなるほど摩耗するものなのだろうか? それについてピレリのモータースポーツ・ディレクターであるマリオ・イゾラは、その可能性は十分にあると指摘した。 レース後、ラッセルの車両重量は796.5kgと測定された。レギュレーションで規定されている最低重量は798kg……つまり1.5kg軽かったということになる。これがタイヤが摩耗したことが原因だと考えると、1本あたり平均で375g……このくらいの数字ならば、確かに現実的であるように感じられる。 1スティントでタイヤはどのくらい摩耗するのか? そう尋ねられたイゾラは、次のように語った。 「通常はタイヤ1本あたり、1kgくらいだと思う」 「摩耗状況によると思う。ジョージに起きたことについて触れるならば、実際の摩耗を計測する必要があるだろう。ここでの摩耗はそれほど大きくはないが、ジョージは長いスティントを走ったからね。他のタイヤを見れば、摩耗は大きな懸念ではなかった。だから正しいことを言うには、ジョージのタイヤが戻ってくるのを待って、計測する必要がある」 通常レースをフィニッシュした後、各車はコースを1周回ってからピットレーンに戻る。この間に各ドライバーは、コースに落ちているタイヤかす(ピックアップ)をタイヤに付け、少しでも車両重量を重くしようとするのが常だ。しかしベルギーGPの舞台であるスパ・フランコルシャンは1周の距離が長いため、フィニッシュラインを通過した後、ターン1でUターンするようにピットレーンに入り、そのピットレーンを逆走してパルクフェルメに向かう。つまりピックアップを拾うチャンスがないのだ。 フィニッシュ後の1周で、どのくらいのタイヤかすを拾うものなのか? そうイゾラに尋ねると、彼は次のように語った。 「具体的なことは分からない。しかしジョージは1.5kg足りなかったらしいが、タイヤ4本で1.5kgならば十分に可能だ。タイヤ1本あたり400g……十分可能な数字なんだ」 ただイゾラは、新品タイヤと使ったタイヤの重量差がどのくらいなのか、一概には言えないと語る。 「コースによってそれは異なる。状況もそれぞれ異なるし、摩耗は直線的に進むものではない。どれだけプッシュするかにもよる。バランスが完璧ならば、4本のタイヤが全て摩耗する。でもここでの摩耗はそれほど大きくない」 「摩耗の断面が教えてくれるようなこともある。例えば、内側のショルダー部分の摩耗が激しいタイヤがあったとする。その場合、注目すべきは容積の摩耗であり、それを測定するにはパルクフェルメが解かれてタイヤが戻ってくるのを待たねばならない」 「最終スティントで使われたタイヤは、まだパルクフェルメにあるんだ」
田中健一, Jonathan Noble
【関連記事】
- ■ラッセルの最低重量違反……その原因は”1ストップ”にあった? ウルフ代表「タイヤがかなり減ってしまっていたかもしれない」
- ■ダニエル・リカルド、近日実施のフィルミングデーに参加へ。しかしレッドブル昇格に向けた“最終面接”なのかは「正直分からない」
- ■ペレス、ベルギーGPでの7位フィニッシュにがっかり……加速する更迭の噂「もう将来のことについては答えない。これが最後だ」
- ■レッドブルからの更迭が噂されるペレス……2番手スタートから7位のベルギーGPにチーム首脳不満。マルコ博士「あまり良い結果じゃないね」
- ■勝てるなんて考えもしていなかった……1ストップ大成功でラッセル逃げ切り勝利。夏休みなんていらない?「来週もう1戦あったらいいのに」