「トー横」や「ドン横」でパパ活する子の家庭に共通する特徴とは。レールを敷く「教育虐待」にも要注意
教育虐待、スポ根パパのような親の過干渉にも注意
こうした話を聞くと「うちの子どもは関係ない」「わが家は大丈夫」と思う人も少なくないはずです。しかし、種部さんの語る「虐待」はもっと広い意味を含んでいるのだとか。 「性的暴力・家庭内暴力など、分かりやすい虐待だけではなく、教育虐待のような親の過干渉にも注意しなければいけません。 母親に多いケースで言えば、自身の人生の代理戦争のように子どもにお受験を強いるだとか、父親に多いケースで言えば、サッカーや野球で結果を残させようとスパルタの訓練を強いるだとか。 家業があって無理に継がせようとする。医者の親が、子どもを無理にでも医者にしようとする行為も一緒です。 どうして、子どもの人生にレールを敷くような行為が問題なのか。それは、どのケースにも共通して、実績を積み上げていかないと褒めてもらえない状況に子どもが陥りがちだからです。逆の見方をすれば親も、何かしらの実績がないと、子どもを無条件で愛せない状態になってしまいがちです。 もちろん子どもは、親に気に入られようと必死に頑張ります。しかし、小さいころから90点でもダメ!というような育てられ方をすると、子どもにとって家は「頑張らなければ褒めてもらえない場所」になってしまいます。当然、居心地は悪くなっていきます。 実際に、こんな子もいました。教育虐待を受け『ドン横』にたむろし『パパ活』を始めて妊娠した14歳の女の子です。 最初は『生まない』と言っていたのですが、突如として『生む』と心変わりしました。その理由を聞くと『私にとっては初めての家族だから』と言いました。 その子にとって親は、同じ家でずっと暮らしていたけれど、家族とは感じられなかったのです」(種部さん) 医者である種部さんも、お子さんがいらっしゃるとか。聞けば、子育ての際には「医者になれ」とは一切言わなかったそう。「医者になれ」どころか「勉強しろ」とすら言わなかったそうです。 「医者にはならない」と子どもが言ったとき、「親の考えや『お医者さん目指すんでしょ』とあてはめられがちなレールではなく、自分の考えで決めてくれて良かった」と心の底から喜んだと教えてくれました。 分かりやすい虐待ではなくても、レールを敷くような行為はやってしまいがち。しかし、親の価値観を押しつける子育ては、場合によっては虐待になり、子どもにとっての家庭の居心地を悪くしてしまう恐れもあると学びました。 フランスでは現に、親の言いつけを守るかどうかで「いい子・悪い子」を決めるような行為も虐待に含まれると種部さんは言います。 自己主張できる・Noと言える状態を子育てのゴールと考え、親の意見にもNoと主張できる(自分の価値観や物差しをもつ)。そんな子どもを育てようと努めている国もあると思えば、レールを敷くだけが子育てではないと考えるきっかけになるのではないでしょうか。 【お話を伺ったのは】 種部恭子 | 産婦人科医・富山県議会議員 女性クリニックWe! TOYAMA代表・富山県議会議員。その他、内閣府男女共同参画会議 女性に対する暴力に関する専門調査会委員、日本産婦人科医会常務理事、富山県医師会常任理事などを務める。
取材・撮影・文/坂本正敬