【問題】奇数の無限、偶数の無限、自然数の無限。一番大きいのはどれ?自然数の無限が、偶数・奇数の無限の2倍ではない、そのシンプルな理由
理系の「3ワカラン」と呼ばれる「ゲーデルの不完全性定理」。「正しいからといって、それが証明可能であるとは限らない」とは、どういうことなのか? この度、リニューアル刊行されたロングセラー『不完全性定理とはなにか 完全版』のなかから「不完全性定理」、そして異なる視点からゲーデルと同じ証明にたどり着いた「チューリングの計算停止問題」のエッセンスをこの記事では紹介します。この記事では、「無限」について考察したカントーの発想をさらに深掘りしていきます。 【図説】「1+1=2」の証明で使われる「ペアノの公理」ってなに? *本記事は『不完全性定理とはなにか 完全版』(ブルーバックス)を再編集したものです。
「無量大数+1」は、無量大数より大きい??
人間は、生まれつき数の概念をもっているようで、幼い子供でもすぐに「ひとーつ、ふたーつ、みーっつ」と数え始めるが、数が大きくなると、直観では理解できなくなるようだ。 小学生くらいになると、どちらが大きな数をいうことができるかで競い合ったりする。「百」、「千」、「万」、「1億」、「1兆」、「1京(けい)」、「1垓(がい)」などと順番に大きくなっていくが、必ず、途中をぜんぶ飛ばして「無量大数!」という奴がでてくる。 子供のあいだでは、それより大きな数はないはずだから、それで終わりと思いきや、「無量大数+1」と、トンチまがいの答えを発見する子もいて、しまいには口喧嘩になったりする。 なんでこんな話をしているかというと、カントール以降の数学の無限を理解するには、「無量大数+1」というトンチみたいなセンスが必要になるからだ。子供の世界の無量大数は、数学でいうところの「無限」だが、それに1を足すという行為は、無限そのものを「数」と認識することにほかならない。 そこで問題になるのが、無限と無限+1の大きさの比較である。そもそも「数えられないほど大きい」という意味をもつ無限なのだから、それにちっぽけな1を足したからといって、大勢に影響はでないだろう。そう考えることもできるし、逆に、無限といえども数にはちがいないのだから、それに1を足したら、確実に大きくなる、と考えることも可能だ。 いったい、どちらが正しいのか。