災害や遭難時に強い! 専用端末やアンテナも不要! 今年は「スマホと衛星の直接通信」元年だ!!
――ところで、「一般的なスマホ」とはどのような端末になるのでしょうか? 法林 KDDIとスペースX社のシステムの場合は、OSがAndroid 15を搭載し、その新機能である「サテライトモード」を利用できる端末となります。Android 15は最新のOSですが、今年は国内・海外メーカーの既存端末も順次アップデートされていくので、直接通信を利用できるユーザーは増えるでしょう。 ――このシステムは国内だとauやUQモバイル、その他KDDI系の回線を使用するMVNOでないと利用できないのでしょうか? 法林 現状ではauのみのサービスとなります。ただし、本システムは「Band 1」という世界的に最も普及した周波数帯を利用しています。国内ではNTTドコモとソフトバンクも採用しており、両社も周波数の一部を直接通信に対応できるようにするかもしれません。 そして、昨年12月18日に国内4キャリアが大規模災害時の新協力体制に関する発表を行ないました。能登半島地震での経験から事業者間の協力が不可欠となり、今後は災害発生時の復旧活動での連携をより強化するという内容です。なので、各携帯電話会社が連携しながら、衛星通信を活用することも考えられます。 ――衛星との直接通信というと、昨年7月からAppleのiPhoneシリーズも「衛星経由の緊急SOS」が国内でも利用できるようになりました。これとの違いは? 法林 AppleのサービスはiPhone 14以降のモデルで利用できます。同社の衛星中継センターの専門スタッフとメッセージでやりとりし、位置情報の共有などを行なう独自のシステムです。 こちらも海外では災害・遭難時の実績があります。課題としては、同システム専用の低軌道衛星の数が少ないことから、対応する地域は17ヵ国。メッセージの送信時は、かなり空が開けているロケーションが必要となり、その送信に15秒ほどかかることも課題となっています。 ――これ以外にもスマホと衛星の直接通信に積極的なメーカーやキャリアは? 法林 国内だと楽天モバイルです。同社はアメリカのAST SpaceMobile社と提携して、衛星との直接通信技術を開発しています。こちらはSMSだけでなく、音声通話、さらにデータ通信も行なえるのが特徴です。 例えば、被災状況をSNSに配信して情報共有することもできます。こちらは2026年からサービスが開始される予定です。 こういった新技術の災害時の活用方法を4キャリアで共有していくことも、今後の大規模災害時の効率の良い救助・援助活動に結びつくのではと考えています。 写真/AST SpaceMobile Apple KDDI SpaceX 法林岳之