社会の排除に対抗「いっそのこと依存症当事者で映画を」 高知東生さんら演じる回復の物語、上映広がる
ギャンブル、薬物、アルコール、買い物、ゲーム。さまざまな依存症からの回復が題材の映画「アディクトを待ちながら」が、6月下旬から上映されている。主演は、俳優の高知東生さん。2016年に覚醒剤取締法違反(所持、使用)などの罪で執行猶予付き有罪判決を受け、その後は治療を受けてきた当事者だ。同様に逮捕歴のある出演者が名を連ねる。依存症者(アディクト)を排除してきた社会へ対抗するように、自ら回復への物語を演じる。 【写真】ギャンブルは「脳がしびれる臨死体験」 バカラにのめりこんだ元大王製紙会長に聞いた、その感覚
監督で脚本のナカムラサヤカさんは「悪人だから依存症になるのではなく、誰もが陥る可能性のある病気だ」と訴え、1人でも多くの回復と社会復帰を願う。作品上映は、東京を皮切りに各地へ広がっている。(共同通信=水内友靖) ▽「誰でも生き直せる」と高知さん、自身の経験重ね演じる 東京・新宿の映画館「K’s cinema」では1週間上映され、約80席のチケットは連日完売した。最終日の7月5日、高知さんは舞台あいさつに立ち「依存症を通じて新たに出会った仲間との人間関係によって、きょうのおれがある。おれでもこうやって生き直せているんだから、誰でも生き直せる。自信を持ってほしい」と話した。 高知さんは2016年に覚醒剤取締法違反などの罪で有罪判決を受けた後、依存症からの回復のため自助グループに参加した。近年は違法薬物防止の啓発活動にも加わる。 映画復帰を果たす今作では、薬物事件で逮捕された大物ミュージシャン役。自身の経験を重ねるように、さまざまな依存症者らと共に再起を期す。
このほか、俳優の橋爪遼さんや、元NHKアナウンサーの塚本堅一さんらも出演する。高知さんと同様に、違法薬物での逮捕歴がある。脇を固めるタレント青木さやかさんも、実生活でパチンコにのめり込んだ経験を公表している。 ▽一歩一歩の回復の道、決して平たんでも一直線でもない 映画では、高知さん演じる大物ミュージャンが逮捕されてから数年後、他の依存症者と共につくるゴスペルグループ「リカバリー」の初コンサートに臨む。 各メンバーは「社会の落後者」「快楽に弱い人間」などと厳しい言葉を浴びせられる。不意に、再び薬物使用やギャンブルなどをする「スリップ」に陥りそうになる。それでも、支え合いながら踏みとどまろうとする。 「やめたい…やめたい…助けて」 「未来には絶望しかなくって、死ぬことばっかり考えていた」 「自分が自分のこと好きになれなかったからだろ。依存症になるってさ」 当事者の家族やファンら周囲も苦悩を抱え、翻弄されながら、回復を信じる。