大学志願者数1位の近畿大学 立役者は広報戦略
■関西トップの教育レベル 「近大マグロ」はその成果 もちろん、魅力ある大学だったからこそ、広報戦略は成功したと言える。近畿大学水産研究所(和歌山県)では、2002年に世界で初めて卵からのクロマグロの完全養殖を成功させ、「近大マグロ」として話題を集めた。昨年には、地元の大阪に次いで東京・銀座にも「近大マグロ」の店を出した。それがテレビのニュースで放映され、新聞やネットでも取り上げられた。これにより、関西以外のエリアでの知名度は一気に上がり、関東からの志願者数は4年前と比べて倍近くにまで増えている。 実は近大は、13ある学部のうち8学部が理系だ。関西の私大では、理系は3分の1で、近大のように半数以上が理系という割合は珍しい。理系は、設備投資などに莫大な資金が必要になるため、新設校ともなると大半は文系にならざるをえないという。「教育と研究のレベルは、関西のトップと自信を持っている」(瀬耕さん)と、近大では充実した設備のもとで、さまざまな研究が行われ、実を結んだ大きな成果の1つが「近大マグロ」だった。 ■打倒「関関同立」ここからが勝負 40年も前から、関西に根強く存在する「関関同立」のブランド力。「“入れ替え戦”のないリーグ戦だ」(世耕さん)と、実力には自信を持ちながらも、人気では近大は歯が立たなかった。それでも、さまざまな広報戦略によって、「関関同立」だけでなく、「東京勢」にも勝つことができた。 「1位になりたいというより、とにかく(近大の魅力を)きちんと知ってもらいたかった。1位になったことで、より知ってもらえる」。長年、「ない」と思っていた念願の“入れ替え戦”を、自らの手で手繰り寄せ、勝利をおさめることに成功した。 しかし、ここからが勝負。「今後は、毎年1人でも増やすことが生き残りに繋がる。でも子供の数は確実に減っている。増やすというより、減らさないことに意味がある」。これまでに培ってきた実力を認知してもらうことで、人気も不動のものにする。 (文責・土井麻由実)