「登山道って、誰が直してるの?」 信越トレイル整備のワークショップに参加してきた【実体験レポート】
■初めての信越トレイルを歩く
それぞれにクワやスコップなどメンテナンスに必要な道具を持ち、信越トレイルへ向けて出発。まずはGATCの方から道具の持ち方についてポイント説明があった。 内容は、周囲の人や自分を傷つけないように尖っている部分を下に向けて持つ、一定の距離を保つ、すれ違う時は声をかけるなど。一見分かっているようで、重たくなってくると肩に担いだり、持ち方を変えたくなってくるもの。基本的だが、何よりも安全に作業を行うことの大切さをきちんと教えてくれた。 筆者は初めて信越トレイルを歩いたが、自然が綺麗に残された素敵な登山道だと感じた。ブナがトンネルのようになっていて、森との距離が近く山と一体になっているようで嬉しかった。 トレイルの途中で雪の重みで曲がったブナの木に遭遇した。普通に歩けば体にぶつかる高さの木と、道に横たわるように生える木があった。そこで、信越トレイルクラブの事務局長 大西さんよりGATCの方へ問いかけた。 「アメリカではこういった木を切りますか? 信越トレイルではくぐったり、またがることのできる木は、伐るのは少し可哀想という気持ちもあってそのまま残している場合がある。」という質問に対し、GATCの方からは「アメリカの木は大体真っすぐ育つので状況は異なるが、トレイルを整備する際にどう考えるかの基準がある。その基準とは、高さ2.5m、幅1.2mのドアを持って歩いた場合に、そのドアが木々にぶつからないかどうかで判断している。」とのこと。木を避けるためトレイルから外れて歩くと、周囲へインパクトが広がる。自然環境への負荷の大きさとハイカーの安全確保を考慮すると、アメリカではこういった木は切る、という答えだった。体格の違いなども考慮されているのだろう。
■いよいよトレイルメンテナンスを体験
我々のチームの整備ポイントに到着した。まずは普通に通ったのだが、道はかなり細く傾斜もあり、滑りそうで怖い。ちょうど触れられる高さに曲がったブナの木が何本かあったため、手で支えながらなんとか全員下りることが出来た。雨が降っていたら尻もちをつきそうなルートだ。 大西さんが考える整備方法をGATCの方へ伝える。内容は、まず山側の斜面を削ることで狭い道幅を拡張し、ステップを作って歩きやすくするというもの。GATCの方はそれに賛同した上で、いかにトレイルのルート上に雨水を通さないかを考えることが大切なので、補修箇所の他のポイントについてルート外に雨水を流す斜面を作ろうと付け加えた。とにかく水の気持ちになってどこに流れたいか考える「Trail Eye(トレイル アイ)」を養うことが大事だと繰り返された。 実際に、水の流れを変更するメンテナンス例を見せてくれた。本来は踏みならされたトレイルのルートに沿って雨水が流れていく。放っておくとルート上に土手が作られ、さらにえぐれが進み傷んでいってしまうため、それを防ぐために雨の通り道をトレイルから外に逃がし、水の流れを拡散して勢いを分散させるというもの。 慣れていないと水の流れをイメージできないため、赤いフラッグを立てて水を流す方向を確認し、作業を行うスタッフ全員で共通の認識が持てるようにしてから、その向こう側を掘って傾斜を作ることで雨水を逃す整備になる。 筆者は1か所目の急だったルートの整備に参加した。幅を広げるため山側の斜面を削り、その後歩きやすいように段を作っていく作業となる。 元々傾斜がきつい場所のため、ふらつかずに立っているだけでも体幹を使うのに、道具を振りかざし引っかかる根っこや岩をどかしながら作業をするのは想像以上に骨が折れた。こちらも同様に、水平にステップを作るのではなく、道の外に雨水を逃がすため少し谷側に傾斜をつけておくのがポイント。 目指すゴールの形は、土が崩れないように丸太などを設置するのだが、時間が限られていたためイベントでの作業は段を作ったところまでで終了。それでも足場が広がってステップが出来たため、整備する前と比べ格段に歩きやすくなった。