平安時代も「映える」ことを最優先するタイプはいた。いつの時代も、キラキラ女子を冷めた目で見る、反対勢力の女子…という構図が!【NHK大河『光る君へ』#30】
なぜ『源氏物語』は人びとの心をつかみ続けるのか。やはり人間の影の部分も知りたい!
紫式部による著作『源氏物語』が時代を問わず多くの人を魅了しているのは、人間の影の部分が描かれているからだと思います。 『源氏物語』の主人公である光源氏(ひかるげんじ)はその美しさが人びとから称えられるほど光り輝いています。しかし、彼には光だけでなく、「影」の部分があることは母との死別にもいえます。光源氏が3歳の頃に母・桐壺更衣(きりつぼのこうい)が亡くなり、彼は愛する母の姿を生涯にわたって求め続けます。 桐壺更衣は徽殿女御(こきでんのにょうご)ら他の后からいじめられる日々を送っていました。桐壺更衣の夫であり、光源氏の父である桐壺帝(きりつぼてい)が桐壺更衣にばかり愛情を注いでいたため、彼女は后たちの嫉妬の対象となったのです。桐壺帝は光源氏が生まれてからは妻同様に息子にも愛情を注ぎました。これにより桐壺更衣へのいじめはエスカレートします。 まひろは人間について光と影が複雑であればあるほど魅力だと語っていましたが、光源氏が魅力的なのは彼の光と影が複雑に絡み合っているからだと思います。もし、彼が苦労知らずのイケメンおぼっちゃんでしかなかったとすれば、人びとの心をこれほどまでに魅了していなかったはずです。 私たちが古典に心惹かれるのは人間の普遍的な影の部分や悩みが詳細に描かれていて、現実世界では共感し合える仲間がいない人も、自分と共感できる人物に本の世界で出会えるためです。影がなく、キラキラしている人から得られるエネルギーもありますが、私たちが厳しい世の中を生き抜くにはそれだけでは十分でないこともあると思います。 本記事では『光る君へ』30話で描かれた、平安時代の文学の“きまりごと”と、『枕草子』『源氏物語』に描こうとしたものの違いについてお伝えしました。 ▶続きの【後編】では、平安貴族が苦労していたコト、現代人のあなたの「平安貴族 適正度」はどれくらいあるのかをお届けします。 >>>記事はこちらから 『「ちっとも優雅じゃないじゃん!」平安貴族の暮らしに存在していた「10の苦労」とは【あなたの貴族の適性度チェック】』 参考文献 木村朗子『紫式部と男たち』文藝春秋 2023年 竹内正彦、真崎なこ『源氏物語の人物図鑑』 三才ブックス 2023年
アメリカ文学研究/ライター
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