『シン・ゴジラ』『ゴジラ-1.0』監督らが明かす…70年前に誕生した「ゴジラのメインテーマ」が代替不可能である理由
巻上公一(ヒカシュー)
【ヒカシューとゴジラ】 思えば1980年に溜池にあった東芝EMIのスタジオで、たまたま伊福部昭氏と居合わせ挨拶したのがはじまりだった。その出会い以前からヒカシューは、デビューした時からずっとゴジラのテーマを演奏し続けていた。だからその出会いは膝が震えるほどの衝撃だった。井上はのめり込み、シンセサイザーによる『ゴジラ伝説』を完成させた。それがきっかけで井上は、伊福部家に足しげく通い、譜面の整理に夢中になり、ぼくらのツアーを休むほどだった。 ヒカシューにおける成果は、だいぶ後になってから結実した。2017年の『ゴジラ伝説V』では、ニューヨーク・ジャパンソサエティ公演後に録音。井上誠を中心にチャラン・ポ・ランタンも加わり、生き生きとした盤が完成した。ぼくは「あの日の叫びは陽炎か」という詩を書いた。ゴジラにおける伊福部音楽に慣れ親しんでいるために、時に新作映画での音楽の切り刻みに落胆することもある。なぜヒカシューに音楽を依頼しないのか不思議で仕方ない。 巻上公一 音楽家、詩人、プロデューサー 現在も活動中のヒカシューのリーダーをつとめながら、ニューヨークからモスクワ、オセアニアまでを飛び回る世界的なアーティストである。民族音楽にも精通しており、ユダヤ音楽のクレズマーをイディッシュ語で歌い、巧みに口琴を操り、2017年トゥバ共和国国際ホーメイコンテストでは優勝も果した。日本トゥバホーメイ協会会長を20年以上務める。 プロデューサーとして、JAZZ ART せんがわをはじめ、ジョン・ゾーンズ・コブラ、湯河原現代音楽フェスティバル、熱海未来音楽祭など多数。 作詩作曲はもちろん、テルミン、コルネット、尺八からエレクトロニクスなど多くの楽器を演奏し、コラボレーションも精力的に行っている。歌らしい歌から歌にもならないものまで歌う歌唱力には定評があり、それらの音楽要素を駆使する演劇パフォーマンスのクリエーターとしても活躍している。