『シン・ゴジラ』『ゴジラ-1.0』監督らが明かす…70年前に誕生した「ゴジラのメインテーマ」が代替不可能である理由
山崎貴
『ゴジラ-1.0』(2023)の制作中、幾分CGが出来上がったところで画像を繋げてみたことがあります。昭和の町にゴジラが現れるシーンがいい感じに仕上がってきていて、嬉しかったのですが、なんか足りない。どうもゴジラになりきっていない。不思議な気持ちでした。姿形は明らかにゴジラで、それが昭和の銀座をズシンズシンと歩いている。どう転んでもゴジラのはずなのに、なんか足りない。そうです。あの音楽です。伊福部サウンドです。 ええ、つけてみましたとも。その途端ですよ、そのゴジラはまごうことなきゴジラそのものになったのです。驚くほどの変化でした。周りを見回すと、プロデューサー達もニヤニヤしながら画面を見ていました。皆「俺たち今、ゴジラの映画作ってるんだなぁ」という実感がはっきりと沸いてきて、ニヤニヤするしか無かったのでしょう。実はあの伊福部サウンドこそがゴジラの正体なのかも知れないとその時思ってしまいました。願わくば、未来永劫、あの曲が失われることが無い事を祈ります。あの曲は人類の宝だと思うからです。 映画監督。1964年、長野県松本市生まれ。 幼少期に『スターウォーズ』や『未知との遭遇』と出会い、強く影響を受け、特撮の道に進むことを決意。阿佐ヶ谷美術専門学校卒業後、1986年に株式会社白組に入社。『大病人』(1993)、『静かな生活』(1995)など、伊丹十三監督作品にてSFXやデジタル合成などを担当。『ジュブナイル』(2000)で監督デビューを果たし、CGによる高度なビジュアルを駆使した映像表現・VFXの第一人者となる。 『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)では、心温まる人情や活気、空気感を持つ昭和の街並みをVFXで表現し話題になり、第29回アカデミー賞最優秀作品賞・監督賞など12部門を受賞。『永遠の0』(2013)、『STAND BY ME ドラえもん』(2014)は、それぞれ第38回アカデミー賞最優秀作品賞ほか8部門、最優秀アニメーション作品賞を受賞。最新作『ゴジラ-1.0』(2023)は、全米での歴代邦画実写作品興収No.1となるなど、海外からも高い評価を受け、第96回アカデミー賞 視覚効果賞など数々の賞を受賞。