『シン・ゴジラ』『ゴジラ-1.0』監督らが明かす…70年前に誕生した「ゴジラのメインテーマ」が代替不可能である理由
佐野史郎
1983年8月5日、日比谷公会堂における『伊福部昭SF特撮映画音楽の夕べ』のコンサートの興奮は忘れられない。子供の頃より繰り返し観続けていた特撮怪獣映画、その映像と共に体の奥底にまで染み込んだ伊福部昭音楽をフルオーケストラで浴び、陶酔した。 それを機に一旦製作を終えたゴジラ映画が再び創られるようになり、今なお、国を超え脅威を増している。核兵器によって目覚めた古代の神獣ゴジラは、鳥取、因幡国一宮、宇部神社の宮司を古来務めてきた伊福部家の末裔、伊福部昭によって鎮められる神事でもあるのだろう。 明治新政府によって神社が統括されると、宮司であった伊福部家はその職を離れ、蝦夷地、北海道へと居を移した。そこで伊福部昭少年が出会ったアイヌ民族の音楽は、伊福部音楽の幹となり、大国主の神話とも呼応して、この列島の古代の響き、ゴジラの咆哮をも解き放ったのだ。 1955年3月4日生まれ、島根県松江市出身。高校卒業後、現代思潮社『美學校』にて中村宏に師事、油彩画を学ぶ。1975年、劇団シェイクスピア・シアター旗揚げに参加、退団後1980年、唐十郎率いる劇団状況劇場入団1984年退団。1986年、林海象監督「夢みるように眠りたい」で映画主演デビュー、1992年、ドラマ「ずっとあなたが好きだった」がヒットしマザコン男冬彦役が社会現象となる。主な出演作品に石井輝男監督「ゲンセンカン主人」(1993)、大河原孝夫監督「ゴジラ2000ミレニアム」(1999)、空音央監督「HAPPYEND」(2024)など。 また「小泉八雲 朗読のしらべ」をギタリストの山本恭司と2007年より続けている。2023年には箱根彫刻の森にて写真展「瞬間と一日」を開催。音楽活動も継続、2023年にフルアルバム『ALBUM』をリリース。
タカハシヒョウリ
劇場で初めて見たゴジラ映画は『ゴジラVSキングギドラ』(1991)でした。この作品が、伊福部昭先生16年ぶりのゴジラ映画へのカムバック作であったこと。その事実が自分の人生に与えた影響は計り知れないと思います。東宝マークから不穏に響くピアノ、相対する二大怪獣をバックに鳴り響くメインタイトル、そして雪崩込むように「U.F.O.襲来」へ。この冒頭の3分で、少年の神殿の中に「伊福部音楽」という揺るぎない定礎が組み込まれたのです。 伊福部音楽には、日本列島の奥底から突き上げてくるようなビートがある。足の裏から下腹部が、心臓が、じんわりと熱くなるような魂の旋律がある。それは、幻想の奥底から幽玄と現れた東宝怪獣たちの咆哮と共鳴して、この星に響き渡っています。 心の奥底に刻み込まれた感動への感謝と共に、ずっと先の世代までこの音楽が響き続けることを願っています。 ロックバンド「オワリカラ」のボーカル・ギターとして2010年から6枚のアルバムをリリース。作詞作曲家として、アイドルグループ、映像作品、大槻ケンヂ氏(筋肉少女帯)のソロプロジェクト、ポケモンカードゲームCM音楽など数々の楽曲制作を手掛ける。2024年11月、ソロ名義での新曲「リバイバル」をリリース。 様々なカルチャーへの偏愛に満ちた筆致で文筆家としても活動し、カルチャー誌から女性ファッション誌まで幅広い媒体にコラム寄稿、番組出演なども多数。 「特撮ファン」活動として、特撮音楽をバンドサウンドで表現する「科楽特奏隊」を仲間たちと結成。監督も務めたMVではウルトラセブンと共演し、「おはスタ(テレビ東京)」に出演。近年は、円谷プロダクション公式メディア連載や、『ウルトラセブン』55周年映像にミュージシャン役として出演など。 好きなゴジラ怪獣はガイガン。