『シン・ゴジラ』『ゴジラ-1.0』監督らが明かす…70年前に誕生した「ゴジラのメインテーマ」が代替不可能である理由
上野耕路
【伊福部昭への細やかなコンテキスト的眼差し】 伊福部昭は今日性とともにあった。前衛から無視されたことをその反論とされそうだが、彼はブーレーズの「主なき槌」のスコアを研究し音楽が観念だけで出来ていたというショックについて語った。そしてクセナキス、ケージ、またセットセオリーについても知っていた。 アーティストには創作動機を奮発させるものが必要だ。それが賛同か反発かはさておき。彼は前衛に反発した。とはいえ彼は戦前においては彼より少し先輩の西欧のアーティストたちに創作動機を奮発させられる。それは彼のそのときの今日性であった。 そんな彼は怪獣映画でしかセリーを採用しなかった。E-G#-D-Eb-A-Bb-Db-C-B-B-Bb-A-F-F#-G-Abという有名なフレーズ。(そこでぼくはE-G#-D-Eb-A-Bb-B-C-F#-G-C#-Fというヴェーベルン的なセリーを作り、さる怪獣映画で使用した。) 作曲家・画家。8 ½(ハチカニブンノイチ)(1978ー79)、ハルメンズ(1980)、ゲルニカ(1981~89)、捏造と贋作(1998~)などのバンド、ソロ(1984~)、坂本龍一氏の映画音楽への参加(1986~87)。 現在作曲、絵画制作を続けながら日本大学芸術学部映画学科非常勤講師、映画音楽、舞台音楽、TVCM音楽などに携わる。 映画:『のぼうの城』『ヘルタースケルター』,etc. TVCM:『QPあえるパスタソースたらこ』『綾鷹』,etc.
開田裕治
私が初めて出会った伊福部昭音楽は、1959年公開の『宇宙大戦争』でした。当時私は6歳。パースの付いた「TOHO SCOPE」の大文字に包まれた東宝マークと共に叩きつけられるように鳴り響いたテーマ曲は、それまで童謡や歌謡曲しか聴いた事もなかった少年の度肝を木っ端みじんに粉砕してしまいました。それ以来、今に至るまで私の心の中に伊福部昭の音楽が鳴り止む事はありません。 特撮映画にのめり込んだまま大学生になった私は、特撮怪獣の同人誌活動を始め、若さゆえの暴挙と言うか恐れを知らぬ蛮行と言うか、一面識もない伊福部先生に直電し、仲間と共に尾山台の伊福部邸に押しかけ、4時間にもわたってインタビュー取材をさせて頂いたのでした。 おそらく特撮映画音楽に的を絞ったインタビューを行ったのは我々が始めてではなかったでしょうか。どこの馬の骨とも知れない我々に対しても、伊福部昭先生は終始穏やかにニコニコと対応して下さり、怪獣馬鹿共の無遠慮な質問にも丁寧に答えて下さいました。伊福部先生の心の広さ、雄大な魂の一端に接し、それまでにも増して伊福部音楽の魅力にのめり込むようになったのは言うまでもありません。 (この時のインタビューは2016年に刊行された、伊福部昭『音楽入門』角川ソフィア文庫判に収録されています) イラストレーター。幼少より怪獣映画、特撮映画を愛好し、学生時代に始めた同人誌活動は現在も継続中。同人活動で広げた人脈を基盤にプロとしての活動を開始。怪獣やロボット等のキャラクターイラストを中心に、雑誌や単行本の表紙、プラモデルやゲームのパッケージ、音楽ソフトのジャケット等をはじめ、カードゲーム、ポスター等のイラストレーション作品を手がけ、『伊福部昭映画音楽全集』シリーズ全十作のジャケットイラストも担当した。 第28回(1997年)星雲賞アート部門受賞 第24回ゆうばり国際映ファンタスティック映画祭にてファンタランド大賞市民賞受賞 現在は妻と三匹のネコに囲まれて東京に在住。