債権譲渡・動産譲渡登記の設定は「危ない会社」か?
譲渡人の売上高伸長率
2023年を最新期として、2021年から3期連続の売上高が判明した62万484社(無作為抽出)を分析した。 売上高合計は、コロナ禍の2021年は1,078兆9,561億円、2022年は1,120兆257億円、2023年は1,218兆4,086億円と、毎年伸びている。売上高伸長率は、2022年が前年比3.8%増、2023年は同8.7%増だった。 一方、譲渡人3,019社の売上高合計は2021年113兆2,811億円、2022年118兆4,346億円(前年比4.5%増)、2023年138兆3,534億円(同16.8%増)だった。2023年は全体売上高の伸び率の2倍近くに達している。 資本金別は、1億円以上702社は2021年103兆9,811億円、2022年108兆6,195億円、2023年127兆6,978億円だった。売上高伸長率は2022年が前年比4.4%増、2023年が同17.5%増だった。 ただ、1億円未満2,317社は、2021年9兆3,000億円、2022年9兆8,150億円、2023年10兆6,555億円で、売上高伸長率は2022年が同5.5%増、2023年が同8.5%増だった。 債権譲渡・動産譲渡の登記設定で、譲渡人は資金を調達し、譲受人は債権回収の手段が広がる。資本金1億円以上の売上高の伸び率が高いことは、動産・債権の担保を活用して取引拡大につなげた可能性を示している。 近年、金融機関は事業性に着目した融資が求められている。不動産や個人保証など、従来の担保を徴求しなくても、リスクマネーの供給が可能だ。今回の分析結果は、債権譲渡・動産譲渡を活用したリスクマネーが業容拡大に寄与している側面を示している。 今後、債権譲渡・動産譲渡に加え、企業全体の事業性を評価する「企業価値担保権」の施行は与信の大きな転換になるだろう。 債権譲渡・動産譲渡が登記された譲渡人を紋切り型に「高リスク」と判断せず、事業規模と事業性に着目し、設定理由を確認する。 審査担当者は営業サイドと「喧嘩になる」ケースも少なくないが、与信対象企業の経営状態の見立てを精緻に提示し、取引枠の確保・拡大の可能性を示すべきだろう。今の時代の審査マンに求められるスキルでもある。