債権譲渡・動産譲渡登記の設定は「危ない会社」か?
債権譲渡・動産譲渡登記の倒産
債権譲渡・動産譲渡の設定には二つの意味がある。一つは支援のため、そして二つ目は債権保全だ。以前は倒産企業に譲渡登記が設定されていたケースが目立ち、譲渡登記=経営が厳しい会社、という認識が広がっていた。 ある企業の審査担当者は「譲渡人と譲受人の関係性は把握できているか」と債権譲渡・動産譲渡の設定には神経をとがらせている。 果たして債権譲渡や動産譲渡の登記が設定された譲渡人のリスクは高いのか。 精緻な検証データはどこにもない。そこでTSRが収集・蓄積しているデータのうち、2023年1月~2024年6月に設定された債権譲渡・動産譲渡登記15万1,559件(抹消・満了登記含む)、譲渡人1万680社を対象に、TSRの保有する企業データとマッチングしてリスクを検証した。 譲渡人1万680社のうち、債権譲渡・動産譲渡登記の抹消・満了前に倒産した企業は375社だった。登記設定から1カ月以内の倒産は34社(0.31%)、1カ月以上1年以内の倒産は130社(1.21%)、1年以上2年以内の倒産は47社(0.44%)だった。倒産比率は3.51%に達する。 これはTSRが6月5日公表の2023年度「倒産発生率(普通法人)」調査の0.257%を大幅に上回る。 倒産した企業375社を対象にした構成比は、譲渡登記の設定から1カ月以内が9.06%(34社)で、1カ月以上1年以内は34.65%(130社)、1年以上2年以内は12.53%(47社)だった。
債権譲渡・動産譲渡登記の傾向
債権譲渡・動産譲渡が登記された企業のうち、1年以内に43.71%、2年以内に56.24%の企業が倒産している。こうした企業はおそらく取引先が債権保全を目的に登記設定したものと思われる。 債権譲渡・動産譲渡の登記が設定された15万1,559件のうち、2024年6月時点で抹消・満了を除く有効な譲渡登記3万6,644件、譲渡人6,884社を対象に、産業別に分析した。TSRが評点(信用スコア)を付与する企業は全国に157万6,334社ある。これを分母にした「譲渡人率」は0.43%だ。ただ、産業別の構成比は濃淡があり、最高は金融・保険業の2.23%、最低は建設業の0.26%だった。 債権譲渡・動産譲渡を登記された企業のうち、倒産率は最高が運輸業の7.09%、次いで製造業の6.46%だった。 全産業平均は3.51%で、最低は金融・保険業の0.48%だった。これは債権の流動化・証券化を目的にした譲渡登記が多いためと推察される。一方、運輸業や製造業は、車両や太陽光発電設備など、不動産以外の固定資産に登記が設定されたとみられる。