「小澤征爾さん、三宅一生さんとの交流が大きな力に」 チャレンジ精神で世界を魅了する建築家・坂茂【世界文化賞】
世界での戦い方を教えてもらった磯崎新氏
坂さん: 丹下健三さんの時代は日本で公共の大きな仕事をたくさんやることによって世界で有名になったのに対して、磯崎さんは、多分初めて世界の超一流の建築家とコンペで戦って勝ち抜いて、世界で地位を名声を獲得した最初だと思うのです。ですから、僕はそういう磯崎さんの建築家としての生きざまというか、世界での戦い方を学ばせてもらったと思います。 坂さんは世界文化賞を受賞するにあたって「この賞をもらって特にうれしいのは世界で尊敬する3人の方が過去に受賞されていること」と語っていたが、その3人とのつながりを聞いた。 1人目は2011年に音楽部門で受賞した小澤征爾さん。坂さんがパリの事務所で遅くまで仕事していたときに、知人から「小澤さんがパリに来ているので一緒にご飯を食べませんか?」という誘いがあり、昔からのファンだったので、大喜びで行ったそうだ。
人間力がずば抜けていた小澤征爾さん
坂さん: お互いラグビーをやっていたこともあり、最初から意気投合しました。日本で行われたラグビーのワールドカップも一緒に見に行きました。 小澤さんは今まで会った人の中で人間的な魅力がもうずば抜けてますよね。普通は有名になったりすると、みんなだんだん人の言うことを聞かなくなったりしますけど、あの方はあれだけの人でも本当に謙虚でチャーミングで、誰とでも気軽に話すし、やはりそういう人が世界を魅了してオーケストラをまとめていくのだなと感じ、自分も建築家として少しでもそうなっていきたいなという目標の人でした。 2人目は2005年に彫刻部門で受賞したファッションデザイナーの三宅一生さん。三宅さんは平たく折り畳める服を開発していて、紙管(しかん)という独自の素材、システムを開発した坂さんと通じるものがあった。
チャンスをもらい、育ててもらった三宅一生さん
坂さん: 三宅さんは、紙の建築が世に出る前から彼のギャラリーを紙管で設計させていただいたり、パリコレクションの舞台設計もやらせていただいたり、そういうチャンスをもらって育てていただきました。 三宅さんが他のデザイナーと何が違うかっていうと、彼は素材の開発をしたり、作り方、工法、いろいろな新しい最新の技術を使って、新しい布だったら新しい洋服の作り方を開発してたことです。僕の興味とまったく同じでした。しかも、世界的に活躍されていながら、非常に謙虚な方ですし、人間性も素晴らしいし、そういう意味で本当に三宅さんの仕事をさせていただいて知り合えたことは、僕の今、建築家としての大きな力になってます。