日本の半導体の凋落招いた「日米協定」の無理難題。1986年の締結前は“日の丸半導体”が世界を席巻していたが
PCやスマホなどの電化製品から自動車、社会インフラまでさまざまなシーンで活用され、もはや現代社会には欠かせない“産業のコメ”とも呼ばれる「半導体」。かつて、その半導体の分野で「日の丸半導体」として世界市場を席巻していた日本のメーカーは、なぜ凋落の一途を辿ってしまったのか。その知られざる「背景」とこれからの「展望」を半導体エネルギー研究所顧問の菊地正典氏が解説します。 ※本稿は、菊地氏の著書『教養としての「半導体」』から一部抜粋・再構成しています。 【図で見る】半導体装置メーカーの売上ランキングの推移
■装置メーカーは「トップ10」に5社がランクイン 半導体業界の中でも、「製造装置メーカーと材料メーカー」に目を転じると、そこには違う景色が見えてきます。 半導体装置メーカーの2005年における売上の世界トップ10は次の表の通りで、1位のAMAT(アメリカ)以下、東京エレクトロン(日本)、ASML(オランダ)、KLAテンコール(アメリカ)、ラムリサーチ(アメリカ)、アドバンテスト(日本)、ニコン(日本)、ノベラス(アメリカ)、SCREEN(日本)、キヤノン(日本)で、日本メーカーが5社を占めています。
※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください 2009年になると、3位だったオランダのASMLがトップに立ち、同じくオランダのASMインターナショナルがベスト10に入ります。日本の製造装置メーカーは1社減ったものの、依然として4社がトップ10に入っています。2020年になると、AMATが首位をASMLから奪い返し、新たにテラダイン(アメリカ)、日立ハイテク(日本)がトップ10にランクインしています。
このように日本の半導体装置メーカーはデバイスメーカー(半導体メーカー、IDM)に比べてはるかに健闘しているといえます。ただ、詳しく見ていくと、トップ10の中での順位は少しずつ低下してきており、決して安心できる状況ではありません。 日本の装置メーカーには、新技術や新方式に対する果敢なチャレンジと、デファクトスタンダード(事実上の標準)化に繋がる開発力、さらにはしかるべきリソース(人材、資金)の投入が必要でしょう。