横浜F・マリノスが公式に“指笛問題”を否定もネットは再炎上…残った問題点とは?
さらに数分後に飲水タイムで中断されると、名古屋の選手たちが家本政明主審へ、同じくマリノスベンチを指さしながら何事かを訴え始めた。直後にマリノスベンチへ向かった家本主審は21日に自身のツイッター(@referee_iemoto)で、審判団として詳細は確認できていないと断りを入れた上で、ピッチ上でのやり取りをこう説明している。 「名古屋側から横浜ベンチから指笛が鳴ったと言われたので横浜スタッフの方に、もしそれが事実なら紛らわしいのでやめてほしい、次同じことがあれば違う対応をしますと伝えました」 こうした状況を受けたマリノスは声明のなかで、8月から指揮を執るマスカット監督以外にも調査を実施したとし、こう説明している。 「クラブとしてこれまでの期間内にて、可能な限り映像を取り寄せて、確認、解析を実施しましたが、当該行為を確認する事はできませんでした。さらに、ベンチ周辺のチーム内スタッフに聞き取りを行いましたが、笛の発生源の目撃者を確認する事はできませんでした」 主審の笛と勘違いされた音が配信された映像内ではっきりと聞こえ、当事者の一人である家本主審も、名古屋側から「指笛が鳴った」と抗議を受けたと明かした。 さらに8月25日のサガン鳥栖戦、同28日の鹿島アントラーズ戦、今月11日のサンフレッチェ広島戦でも同じような状況が生じていたと示す動画が、相次いでネットに投稿された。名古屋戦と同じくいずれも最終ラインの裏へ相手フォワードに抜け出され、マリノスがピンチに陥りかけた直後に鳴り響く、主審の笛にも似た音が確認できる。 一連の紛らわしい音が意図的に発生させたものだとすれば、サッカーの試合に臨む上での大前提となるフェアプレー精神を著しく欠いた極めて悪質な行為。子どもたちに夢を与える存在を謳うJリーグとしても、決して看過できない大問題となる。 だからこそマリノスも声明のなかで「本件はクラブとして重要な事象」と位置づけ、対応策として【1】今後行われる公式戦にて横浜F・マリノスベンチ及びその周辺の観察、確認【2】関係各所の協力を仰ぎ、本件の当該試合以外も含む事象検証、聞き取りの継続とJリーグへの報告――を実施していくと表明している。 騒動拡大から2日後に声明を発表するなど、マリノス側が見せたスピーディーな対応は評価できる。しかしマリノスの試合で、それもピンチに陥りかけた場面で4試合続けて不可解な音が発生した事象を前にして、内部調査では今回の声明が限界であり、対応策を継続させていっても事実が解明される可能性は低いと言わざるをえない。 求められるのはJリーグや独立した第三者機関による、公正中立な調査・検証を介しての事実解明と再発の防止となる。事実関係がうやむやになる状況はマリノスだけに限らず、必死にプレーしている選手たちを含めたJリーグそのものへの不信感につながり、ひいては日本サッカー界全体の価値を貶める事態を招きかねない。 マリノスがアウェイだった鳥栖、広島、そして名古屋戦は、新型コロナウイルスの感染防止措置の一環として、それぞれのスタジアムにはビジターのファン・サポーター席は設置されていない。スタンドが発信源とはまず考えられない状況下で、それでもスタジアム内のどこかで誰かがスポーツマンシップに反する音を鳴らしている。 釈然としない思いを残したまま、川崎フロンターレと優勝を争うマリノスは25日の次節で敵地・ニッパツ三ツ沢球技場へ乗り込み、横浜FCとの“横浜ダービー”に臨む。 (文責・藤江直人/スポーツライター)