「日本のお正月」を日本人以上に楽しんでいる…観光客でも留学生でもない「日本語が話せない中国人たち」の正体
■日本人と一緒にあくせく就活する必要もなし 余談だが、2~3年前に取材した20代の中国人男性は、都内の私立大学を卒業後、池袋にある中国系チェーン店に入社。いきなり幹部となり、店舗の運営などを任されていた。私はその店舗でその男性と知り合ったが、日本語は少ししかできなかった。 日本の大学を卒業しているのにおかしいな、と思ったが、聞いてみると、大学のゼミの教授も中国人、同級生も中国人ばかりで、在学中に知り合ったチェーンの経営者の会社にコネで就職したという話だった。 東京・高田馬場には中国人が経営する大学受験予備校が多数あるが、そこで、日本の大学の合格ノウハウを中国語で教えてくれる講師も、現役の中国人大学生だから、日本語のレベルが低くても、どこかの大学に合格できるのだろう。 以前なら、日本の大学を卒業したら、日本の一流企業に就職し、日本に定住するというのが、留学生のひとつの成功パターンだったが、現在では、日本人大学生と一緒にあくせく就活しなくても、日本の中国系企業に就職すればいいと考える人も増えている。中国に住む親が資金を提供してくれる場合は、「留学」ビザから「経営・管理」ビザへと切り替えて、大学卒業後に独立し、経営者になることも可能だ。 ■日本で楽しくお正月を迎えた中国人たち このように、「日本語が話せない」ことは、日本移住のハードルにならない。それどころか、そもそも日本語を話す必要がないという環境がこの日本国内に整っている。あるいは、日本語を話すシチュエーションがほとんどない、という状況になってきているともいえる。 先日、中国で日本語教師として働く知人が「以前は日本語をしっかり学んで日本の大学院に進学したり、日本の企業に就職したりするという『日本留学組』がいた。日本語を学ぶことは、英語を学ぶことと同様、将来の仕事にプラスになると考えてコツコツ学ぶ人が多かったが、いまは全然違う。日本語を学ぶ、学ばないは日本移住と相関関係がない」と話していたが、その通りとなっている。これもSNSの力、そして、在日中国人の人口の多さから可能となっていることだ。 そのため、日本のお正月(年末年始)や中国の春節(旧正月)時期に中国に帰省しなくても全然寂しくない、といった現象も起きている。「日本のなかの中国」で生活が成り立っているので、お正月のパーティーで食べる中華食材や中華調味料、中国酒もすぐにSNSで調達できるし、春節気分も、日本のガチ中華の店で十分に味わえるからだ。春節前夜に中国で放送される国民的テレビ番組「春節連歓晩会」(略して「春晩」)も、ネットで視聴できるので、中国に住んでいる友だちとも情報を共有できる。