東京都の「感染状況」警戒レベルが最高に 専門家はどう分析したか
●接触歴不明者数と増加比
新規陽性者における接触歴不明者は、1週間平均で77.3人(前回は43.7人)。増加比は198.2%(同161.9%)で先週より2倍近い伸びとなった。 大曲氏は「この状況が同じ2倍、2倍と増えていくと、4週間後には、接触歴不明な患者は16倍に、計算すると1日あたり1200人になる。これは接触歴が不明な人だけの数だ」と危機感をあらわにした。 「前回の流行と今回では、患者の構成比で違いはあるが、医療に与える影響、あるいはこのまま増えていけばやがてリスクの高い人へ感染が広がって、重症の方や亡くなる方が出てくる」。こういった懸念を勘案し、『感染状況』については4段階のうちもっとも警戒度の高い「感染が拡大質得ると思われる(赤色)」に引き上げられた。
●PCR検査の陽性率
次に「医療提供体制」における検査の陽性率(1週間平均)をみると、今回は6.1%(検査数2651.7人)で、前回の5.6%(同2195.7人)より増加した。ちなみに、宣言下での最大値は4月11日の31.7%なので、その頃に比べるとまだ陽性率は低い。 猪口氏は「3週連続で増加している。この増加は、陽性率の高い特定の地域や対象へのPCR検査の影響と思われる。この陽性率の増加を踏まえると、検査体制の強化が必要と思われる」と指摘した。
●入院患者数
入院患者数については、今回は週平均で651人となっているが、猪口氏は「きょう(15日)現在は約800が入院しており、先週の約2倍」だと強調。 病床数を1000床確保するというレベル1の状態では「対応できない」として、7月7日に中等症患者向けに2700床(レベル2)、重症患者向けに100床の確保を医療機関に依頼した。「病床を稼働するためには2週間程度かかるので、今から体制整備を求めている」という。 新規陽性者が急増する中で、「無症状の陽性者が18%を占める」とも指摘。そのため「大規模な宿泊療養施設が必要。このまま新規陽性者が増えると新型コロナ医療と通常医療の両立が難しくなる」と訴え、無症状・軽症患者については、医療機関や宿泊療養だけではなく、場合によっては今後自宅療養も検討しなければならない状況だとした。 ただ重症患者数の増加はみられないため、「医療提供体制」への評価としては、上から2番目に警戒度が高い「体制強化が必要であると思われる(オレンジ色)」に据え置かれた。 猪口氏は東京での現状の感染拡大に関して「何とか重症者が増えないでいる大きな原因は、20、30代の患者が多くて重症化リスクが少ないこと」を挙げた。重症化リスクは50代以上になると5~15%に増えると説明し、「人数が増えてきた上で患者層が変わると、一気に医療提供体制に負荷がかかる。いかに年齢層が変わらないでいるかも1つのテーマになる」との見方を示した。