中国版MeToo運動で「告発される人」と「決して告発されない人」の決定的な違い
社会のあり方に関心を持ち、それを変えようとする行為は、共産党によるもの以外は、すべて社会の不安定要素として危険視される。国外にいる別の女権活動家は「女権主義は、この社会のメインストリームと政府に歓迎されていない。共産党政権が支配する秩序と女権主義の主張との衝突は不可避のものだ」と踏み込む。 このようにMeToo運動に対する圧力が徐々に強まり、2018年5月ごろには「被害を訴える」という動きは一時的に少なくなった。 ところが7月に入ると、運動の舞台は大学からNGO、メディア、宗教界などに一気に広がった。女権主義者らがまとめた統計では、2018年上半期には少なくとも32件の被害の告発があり、このうち22件は7月に集中している。1人の告発が別の被害者の背中を押して告発を促すかたちとなり、同年7月は中国のMeToo運動にとってひとつのクライマックスとなった。 ● 性加害で告発された NGO関係者や著名記者 注意すべきなのは、7月(とくに下旬)に相次いだ告発はNGO関係者や政府に批判的なジャーナリストが加害者側とされる事案が多かったことだ。
たとえば、中国誌「鳳凰週刊」の元著名記者、鄧飛氏は7月23日から複数の女性から立て続けに告発を受けた。鄧氏は、貧しい農村の子どもに無料で昼食を提供する「免費午餐(フリー・ランチ)」を立ち上げたことで知られ、誘拐された子どもを救う活動などにも関わってきた。 微博に500万人のフォロワーがいた鄧氏に対する告発は、民主派や社会運動に取り組む人々に大きな衝撃を与えた。鄧氏はすべての公益事業から離れるとの声明を出した一方、告発内容は否定して、告発した女性らを名誉毀損で訴えた。 このほか、B型肝炎患者を支援する「億友公益」創設者の雷闖氏は、2015年に当時20歳だったボランティアを強姦したとして告発された。雷氏は告発内容を認めて自首する考えを示したが、すぐに撤回した。また政府に批判的だったジャーナリスト、章文氏も複数の告発を受けた。