10万人に3.7人、難病と戦う24歳がプロテスト合格圏内 中3で世界制した平塚新夢「一打に集中」
JLPGA最終プロテスト
2024年度の日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)最終プロテストは30日、茨城・大洗GC(6602ヤード、パー72)で2日目が行われた。36位から出た平塚新夢は3バーディー、3ボギーの72で回り、通算2オーバー。合格圏内の16位に浮上した。中3で世界ジュニアマッチプレー選手権優勝、高3でステップ・アップ・ツアー優勝と輝かしい実績を残してきたが、その後に国が指定する難病「成人発症スチル病」を患った。今も病と向き合う24歳は「冷静に、目の前の一打に集中」と残り2日のカギを挙げた。 【画像】絶望から再起した女子ゴルファー 遂に手にした“合格の証し”の実際の写真(5枚目) 序盤は雨にも見舞われた難コースでのプレー。会心のゴルフではなくても、冷静さを保った。前半2つ伸ばした平塚は、後半出だしの10番でボギー。その後も我慢の展開が続いたが、何とかこの日イーブンパーで凌いだ。 大多数の選手がスコアを崩す中、平塚は耐えた形だが「後半短いパットを外しちゃったりして、うーん……という感じ」と納得はしない。ただ「悪いショットの後でも冷静に、バタバタと崩れずにいられた気はする。決していいスコアではないんですけど、メンタルの起伏は少なめでプレーできたと思う」と精神的に安定していた点は満足だった。 中3で出場した世界ジュニアマッチプレー選手権を制し、明秀学園日立高3年時にはステップ・アップ・ツアーの「静ヒルズレディース 森ビルカップ」で史上5人目のアマチュア優勝を果たした。しかし、1度目のプロテスト受験だった2018年、群発頭痛に襲われ2次予選を欠場。さらにツアー予選会(QT)突破を目指す中でも体調を崩した。国が指定する難病「成人発症スチル病」と診断された。 難病情報センター公式サイトによると、日本では人口10万人当たり3.7人が患うという珍しい病気。「力が入らず、関節痛で立ち上がったり、起き上がったりするのも大変」。症状を抑える薬の副作用で顔がパンパンに丸くなる「ムーンフェイス」にも悩んだ。食べる量は変わらなくても筋力が減り、脂肪だけが増える。約6か月後には練習を再開したが、躓いた影響は大きかった。 現在も薬を飲みつつ、2か月おきに通院するなど病と向き合う。今回でプロテスト受験は7度目。最終まで進んだのは3度目だ。プロゴルファーではなく、別の道を考えたこともある。ただ、不完全燃焼のまま終わりたくなかった。 「ゴルフをしていない普通の友達に相談したら『目指せるものがあるだけ羨ましい』と言ってくれる。辞めるのは簡単なので、本当に辞めたくなったら潔く。ちょっとでも心残りあるなら、頑張ろうかなと」 高度な戦略性を必要とする大洗GCでの戦い。「バーディーを狙ってとれるホールも少ない。冷静に、目の前の一打に集中して、精一杯やれたら悔いはないと思う」。状態はベスト時の50%程だが、このチャンスを手放すつもりはない。
THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi