au TOM'S GR Supraが決勝前に連覇達成、坪井翔/山下健太組が逆転ポールポジションで戴冠【スーパーGT最終戦GT500予選レポート】
異例尽くしの12月の最終戦開催。延期された2024年スーパーGT第5戦、シーズン最終戦となる『SUZUKA GT 300km RACE GRAND FINAL』のGT500クラス公式予選は、冬到来のなかノーウエイトの勝負にて、盤石かつ安定した速さを披露し続けた王者36号車au TOM’S GR Supraの坪井翔/山下健太組がポールポジションを獲得して3ポイントを追加し、ライバルが低迷したことで決勝を前にチャンピオンが決定。TOM’Sと坪井の2連覇が達成された。 【写真】Q1最速を決めた名取鉄平と近藤真彦監督(リアライズコーポレーション ADVAN Z)/2024スーパーGT第5戦鈴鹿 カレンダーに組み込まれていた年間2ラウンド目の鈴鹿サーキットは、本来なら夏休み最後の8月末の開催予定だったが、台風10号の直撃により真冬の12月開催に順延。迎えた鈴鹿ラウンドは初日の7日土曜から澄み切った快晴に恵まれ、朝9時15分開始の公式練習では冬の冷え込みが本格化する気温11度、路面温度12度というオフシーズンテストばりのコンディションに。 さらに大会延期は鈴鹿での勝負条件にも影響を及ぼし、年間での開催8戦目としてGT500全車のサクセスウエイト(SW)が撤廃されているうえ、低気温でタイヤの内圧が上がりづらいとの想定にて、気温が高い時間帯に先んじてGT500クラスの予選Q1を実施することに。 これは相対的に車重のあるGT300クラス(1180~1384kg)に対し、数100kgレベルで軽い(1020kg)GT500の重量も考慮した措置だが、さらに予選セッションの時間を5分延長すると同時に、週末の持ち込みタイヤセット数も従来の300kmレースでの4セットから、特例として1セット追加の5セットとされた。 チャンピオンシップの観点からは、今季より予選トップ3にポイントが加算(ポール3点、2番手2点、3番手1点)されるため、ランキング首位を行く王者36号車au TOM’S GR Supraに対し、同2位の100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GT(-18点)や、3位の38号車KeePer CERUMO GR Supra(-22点)、そして4位37号車Deloitte TOM’S GR Supra(-23点)まで数字上のタイトル獲得の可能性が残される。 逆に言えば、首位を行くディフェンディングチャンピオンは、ライバルに対し明日の優勝20ポイント獲得でも届かない範囲にポイント差を広げられれば、この予選でチャンピオンを決める可能性がある。エンジン出力が増大する真冬の低気温、ダウンフォースを増すコーナー区間の向かい風、そしてノーウエイト最終戦の“直球勝負”という緊迫感。これら要素が、午後の予選にどう作用するかが見どころとなった。 ■コースオフから復活のトップタイム 13時50分時点で気温は14度とほぼ横ばいながら、朝から陽射しを受け続けた路面温度は24度まで上昇するコンディションに。前述のとおり、いつもとは異なりGT500から予選Q1が開始されるも、15分間に延長されたセッションの序盤は各車ともガレージ内で待機する展開となる。 開始3分で24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zを先頭にコースインが始まり、ここから間隔を空けるように各陣営が続く。さらに残り8分で今週末でスーパーGTラストレースを迎えるロニー・クインタレッリが乗る23号車MOTUL AUTECH Zがピットを後にし、そこから約1分ほどを経て唯一のダンロップタイヤを装着する64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTが15台の最後にトラックへと向かっていく。 残り5分半の時点で、計測3周目だった24号車リアライズの名取鉄平が逆バンクからNIPPOコーナーで姿勢を乱しスピン。リヤからグラベルへ飛び込み縁石でのジャンプを喫し、車体を激しく打ち付けダメージが心配されるような一幕も。 その一方、計測4周目の100号車STANLEY山本尚貴が1分44秒フラットの基準タイムを記録し、午前の非公式のフリー走行に続いて早くもコースレコードを更新していく。さらに背後にも16号車、8号車のARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT艦隊が続くと、全15台の中段でアタックを進めていた17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTの塚越広大が、まさにチェッカー計時で1分43秒台に飛び込む1分43秒988まで伸ばすことに。 その前方で最後のアタックラップを敢行する各車のなか、やはり王者がノーウエイト条件で盤石の速さを見せ、36号車auの山下が計測6周目で1分43秒737としてトップタイムを更新。しかしその直後、セッション序盤にグラベルからの“着陸”を決めていた24号車リアライズの名取が、なんとそのセクター2で最速を更新して1分43秒670と、圧巻のフライングラップを決めてQ1首位を奪い獲ってみせる。 背後には37号車Deloitteの笹原右京が割って入り、3番手の山下はQ2の坪井にトップ3の望みを繋ぐことに。4番手に17号車Astemo、5番手に100号車STANLEYと2台のホンダ/HRC陣営が続く結果となった。 ■決勝前の予選でチャンピオンを決めたau TOM'S GR Supra「空気読めなくてすみません」 陽が傾き始めた14時48分開始のQ2は、セッション開始から37号車Deloitteのジュリアーノ・アレジ、24号車リアライズ松田次生が先行。王者auの坪井も早めの動き出しで5番目にガレージを離れることに。そこから少し間を開け、残り10分を切ったところで各車が一斉に傾れ込んでいく。 さらに2分ほどを待って64号車Modulo、100号車STANLEYがピットを離れるも、最後の1台となる23号車MOTUL AUTECH Zの千代勝正はさらにウエイティング。残り6分を切ったところでようやくのトラックインとなった。 ここでまずは最初のアタックに向かっていた12号車MARELLI IMPUL Zの平峰一貴に悲運が待ち受ける。 アンダーフロアから火花を散らし、セクターベストを更新する力走も虚しく、前方でバックオフを図ろうとしていた14号車ENEOS X PRIME GR Supraの動きに乱されたか。シケインのブレーキング時に姿勢を乱し、まさかのスピンを喫してしまう(のちに審議対象に)。 そんな展開を横目に、各車とも入念なウォーミングアップでの一発勝負に賭ける動きを見せ、最後のチェッカーラップでベスト更新合戦の様相になると、12号車MARELLI IMPULの背後で計測5周目のアタックを進めていた8号車ARTA野尻智紀が1分44秒894を計時。それをわずか計測2周目の23号車千代が1分43秒734で破っていく。 しかし主役を奪ったのは、先のシケインで充分な前方スペースを稼いでいた14号車ENEOS X PRIMEの福住仁嶺で、自身計測5周目だったチェッカーラップで1分43秒143と、Q1トップタイムをコンマ5秒近く削り取る驚異的なタイムを叩き出す。 そして今季ここまで接触トラブルなど、レース展開に苦しめられた17号車Astemoの太田格之進も、1分43秒220と追い縋ったもののわずかに届かず。 これで勝負は決した空気のなか、計測6周目の”大トリ”でアタックを進めていた36号車auの坪井が、1分43秒271とQ2セッション3番手タイムを記録。その時点で合算ポールポジションが成立し、タイトルを争うライバルが予選でノーポイントに終わったため、チャンピオンが決定することになった。 予選直後のテレビインタビューでは「見ている人はつまらないと思うのですけど」(山下)、「空気読めなくてすみません」(坪井)と、苦笑いで話すドライバーたち。その後方から、36号車auの吉武聡エンジニアが縁起だるまを持って割って入るシーンも見られ、36号車のガレージではすでに祝勝ムードとなった。 その36号車auとランキング上ではもっとも近い位置にいた100号車STANLEYは、合算タイムで2番手となった17号車Astemoや同14号車ENEOS、そしてQ1トップ通過の24号車リアライズに次ぐ5番手で予選を終えている。 [オートスポーツweb 2024年12月07日]