【認知症専門医が解説】認知症の徘徊対策に有効な「7つの方法」
頭ごなしに叱らないで、理由をきちんと聞いてあげて!
では、どのように対応したらいいのだろうか? それには7つの方法が有効だ。 《徘徊の対処方法》 【1】叱らずに理由を聞いてあげる ポイントのひとつは、頭ごなしに叱らないことだ。たとえ、叱られた内容は忘れたとしても、そのときの恐怖や嫌な気持ちは残る。するとそれから逃げようとして、さらに徘徊が進むかもしれない。 そして、なぜ外出したのか尋ねることも大切だ。周囲の人にはわからなくても、本人なりに徘徊する理由がある。どんな答えが返ってきても、びっくりしないで、よく話を聞いてみよう。明確な答えが返ってこなくても、会話の中にヒントが見つかるかもしれない。少しでも気持ちに寄り添うことが大切だ。 【2】一緒に歩いてあげる 徘徊が始まりそうと気づいたり、途中で遭遇した場合は、すぐに引き戻すのではなく、しばらく歩かせてあげよう。この場合は見守りが必要なので、一緒にしばらく歩いて、少し落ち着いたところで「そろそろ帰りましょうか」と優しく帰宅を促す。 【3】日中に適度な運動をする 日中はできるだけ活動的に過ごすと、夜よく眠れるので、夜間の徘徊予防になる。 体操をしたり、庭木の手入れや草むしり、家事をしたり、日曜大工のようなことをしてもいいだろう。なにか役割を担ってもらうことで生活にハリが出て、認知症状の悪化を防ぐことに一役買ってくれる。 誰でもずっと家にいたら退屈する。そんなときはデイサービスを利用するのもいいだろう。介護に慣れたプロが対応してくれるので安心であり、レクリエーションや散歩などで体を適度に動かすことで、自宅では落ち着いて過ごせ、徘徊症状を軽減させる場合がある。 【4】玄関から出て行ったときにわかるような工夫をする ドアが開くと鳴るベルやセンサーをつけるなど、玄関から出て行ったときに家族に知らせる工夫をしてみよう。特に深夜の対策は必要だ。人の動きを感知する人感センサーで外に出ようとしていることがわかれば、出かけてしまう前に対応ができて安心だ。また、玄関の鍵を少し操作が難しい新しいものに替えることで時間かせぎができる。窓にも開けにくい工夫をしよう。 できるだけ、家の外に一緒に外出する機会を増やして、本人のストレス軽減を図ろう。無理に止めると、逆に逃げ出したい気持ちが増したり、暴れ出すといった行動に出ることがあるので注意が必要だ。必要時には専門家に相談しよう。 【5】服や持ち物に名札をつける よく着る服や持ち物、靴の内側などに、名前と連絡先を書いておく。徘徊の途中で保護されたときに家に連絡、もしくは送り届けてもらえる可能性が高まる。 【6】近所の人や自治体に協力してもらう ご近所さんや民生委員の人に病状や徘徊の事実を説明し、近くの交番にも身体的特徴などを伝えて、見かけたら連絡をくれるようにお願いしておく。自治体の徘徊SOSネットワークに登録しておくと、警察と連携が取りやすくなって安心だ。 【7】GPSを活用する GPSは人工衛星を利用して、どの場所にいるか現在地を知らせるシステムだ。このGPS機能付きのスマホを隠しポケットなどにしのばせておいたり、GPS機能のついた靴を履かせる方法もある。 「家族の中だけで解決しようとせず、近所の人や自治体、デイサービスなどの力を借りて、地域での見守り態勢を築いていくことが大切です」 【教えてくれたのは】 内門大丈さん 認知症専門医。医療法人社団 彰耀会理事長。「メモリーケアクリニック湘南」院長。横浜市立大学医学部を卒業後、同大大学院博士課程(精神医学専攻)を修了。横浜での病院勤務、「湘南いなほクリニック」院長を経て、2022年より現職。認知症の人の在宅医療を推進し、認知症に関する啓発活動や地域コミュニティの活性化に取り組む。『家族で「軽度の認知症」の進行を少しでも遅らせる本』(大和出版)など著書多数。 イラスト/東 千夏 取材・原文/山村浩子