天然の「金塊」ができるのはなぜ? 長年の謎の答えは「たくさんの地震」か、研究
錬金術のような仕組み
地震が金塊を作る謎の力の正体なのかどうかを調べるために、ボイジー氏のチームは、金を含む溶液が入った密閉空間に、純粋な天然の石英の板を複数枚置いた。一部の板には、地震波を再現する機械で振動が加えられた。その他の板には、対照実験として振動を加えずにおいた。研究者らは、振動を加えた板の表面に固形の金が現れることを期待した。 振動を止めた後、ボイジー氏は石英を取り出し、強力な顕微鏡で観察した。そこに見えていたのは、石英の表面でキラキラと輝く無数の金の粒だった。 「成功した瞬間は、喜びでおかしくなりそうでした」と氏は言う。「椅子の背にもたれかかって、大声で叫びましたよ」 期待した通り、振動が加えられた石英は電場を形成していた。溶液に溶けていた金は、電場に引き寄せられ、石英の表面に固体の金の粒として沈着した。しかし、謎はまだ残されていた。「最大の謎は、非常に大きな金塊がどのように作られるのかということなのです」とボイジー氏。 この問題に取り組むために、氏は、別の石英の塊を先ほどの人工地震マシンにかけた。ただし、今度の石英には、すでに小さな金塊が含まれていた。そしてこの石英に振動を加えると、金塊は成長を始めた。 金は電気を通すため、すでにある金塊は電極として機能し、溶液から移動してくる金の粒がそこへ優先的に引き寄せられる。前もって存在する金塊が、ほかの金を引き寄せる「避雷針になるのです」とボイジー氏は言う。 自然界では、金塊を含む石英の鉱脈はおそらく、一度の地震ではなく、多くの地震にさらされることでできたと考えられる。最初の数回で小さな金の粒が出現した後、さらに地震が起こることで、より多くの金の粒がそこに集まって成長し、やがて金塊となる。 地質学者たちはこれまで、どこを探せば金塊が見つかるのかを知っていたにもかかわらず、そこに金が存在するという事実に困惑させられてきた。「今回の発見は、この謎の解明に大いに貢献するでしょう」とピトケアン氏は言う。 数世紀前であれば、ごくありふれた石英を揺らせば金ができるという考えは、錬金術以外の何物でもないとみなされたはずだ。 「あまりに整然と、きれいにまとまりすぎた答えのようにも思えます」とボイジー氏は言う。「しかし、私は大いに満足しています」
文=Robin George Andrews/訳=北村京子