習近平の2025年は「悪夢の1年」になる…!中国は「格差拡大への不満」で凶悪犯罪大爆発、トランプ「追加制裁関税」が致命傷になる可能性
社会主義中国でなぜ格差が拡大しているのか
答えは「中国はもはや社会主義ではなくなった」。マルクスが提唱した共産主義のユートピアは、富をそれぞれの需要に応じて平等に分配されるもので、不平等にならないといわれている。毛沢東時代の中国は計画経済だったため、食料品と日用品のほとんどは配給制だった。当時、共産党高級幹部は特権こそあったが、人数は多くない。社会全般の所得格差がそれほど大きくなかった。毛沢東時代は大半の人が貧しくてまさに「貧しきを患えず」の時代だった。毛沢東のすごいところは、全中国人民に貧しさに耐えるように禁欲を求めてそれに成功したことだった。 改革・開放以降、経済の自由化とともに、経済が発展した。経済発展とはパイが大きくなることであるが、政府・共産党がそのパイを公平に切り分ける分配制度を整備していないのが問題である。中国では、富の分配は権力の中心との距離によって決まるものになっている。権力の中心に近い共産党幹部はより多くの富を獲得するのに対して、権力と無縁の農民や労働者は不利の立場に立っている。習近平政権は共同富裕の夢を提唱しているが、このままでは、それは実現できない。 共産党幹部の正規の可処分所得、すなわち、給料や手当はべらぼうに高いわけではなく、農民や労働者より多いが、ジニ係数を0.475になるまで押し上げるほどではない。問題は彼らに付与されている社会保障が等級の高い幹部ほど自己負担率が低く、最高位の幹部の場合、自己負担率はゼロになる。家も車も無償で提供されるだけでなく、家族が食べる食材も特別供給されるオーガニックのものである。そのうえ、共産党幹部の腐敗が横行しており、収賄の金額は年々増加して、近年、天文学的数字になっている。
凶悪犯罪が多発する直接のきっかけはコロナ禍
60代以上の中国人に、いつごろの生活はよかったかと聞くと、多くの人は1980年代は希望があってよかったと答える。逆に、今の生活について聞くと、希望が持てなくなって先が見通せなくなったと多くの人は感じている。一般的に貧しい生活から豊かな生活へ上り坂を辿る過程は人々が希望を持てる。逆に、豊かな生活から貧しい生活へ下り坂を辿る過程では、人々は悲観的になりがちになる。 中国経済が成長していた時代も不平等の問題があったが、経済成長によってそれが浮上しにくい。経済成長が落ち込んで不平等の問題が一気に浮上してきた。しかも同じ境遇にいる人は互いに影響しあって、凶悪犯罪が多発しやすくなる。 中国で凶悪犯罪が多発する直接なきっかけはコロナ禍である。コロナ禍前は、中国人はある程度希望を持てた。当時、インバウンドの中国人観光客は大挙して日本で爆買いしていた。東京や大阪の繫華街で中国人観光客を乗せた大型観光バスはずらりと並んでいたのは記憶に新しい。しかし、コロナ禍が収束したあと、日本に旅行に来る中国人と出くわすことがあるが、中国人観光客を乗せた大型観光バスをほとんど見かけないうえ、爆買いの中国人はほとんどいない。原因は中国経済が回復していないことにある。 コロナ禍が中国社会に残した傷跡は予想以上に深い。中国国内のSNS上の情報によると、3年間のコロナ禍、約400万社の中小零細企業がつぶれた。その結果、若年層の失業率が急上昇している。今や中国経済の繁栄は国家統計局の統計でしか確認できない。実は、若年層失業率の上昇によって現役の会社員の給料を大きく押し下げている。なぜならば、企業の業績が悪化しているからである。 こうしたなかで、不動産バブルが崩壊してしまった。中国に不動産価格が絶対に下落しないという神話があった。しかし、世の中に崩壊しないバブルは存在しない。バブルが崩壊し、大手不動産デベロッパーは相次いで債務超過に陥った。今、住宅ローンの返済を滞る家庭は増えている。裁判者が差し押さえしたマンションなどの物件をネット上に競売に出している。競売価格は裁判所の査定価格より軒並み4割前後低くなっているが、成立しない物件が多い。要するに、家庭のバランスシートが壊れたのである。