「昔に比べたら、私らは温室育ちですよ」ーーAマッソ・加納愛子、芸人としての生き方 #昭和98年
ピン芸人をやっていける人間ではない
結婚、出産など、芸人に限らず、女性は仕事への取り組み方を変えざるを得ない場面に出くわす。Aマッソは二人とも既婚だが、ライフステージと仕事とのバランスについては、どう考えているのだろう。 「先輩が、たとえば子どもができたりとか、そういう時に、どういう動きを取るかというのは、興味深いです。やすともさん(海原やすよ ともこ)とか、ニッチェさんも、お仕事しながら子育てされてるから、母芸人ってたくましいなと敬意を持って見てますけど。でも正直、そういうライフステージだけじゃなくて、毎年『来年仕事が減ったらどうしよう』という不安がまずあります。こうやって忙しくさせていただいている現状を、当たり前だと思ってはいけない。いつでも2回目はないと思ってやろう、とか、そういう気持ちは忘れないでいたい」 ピンでの活動も増えているが、知名度が上がるにつれ、文化人として突き抜けたいという思いにはならないのか。加納にとって、コンビで芸を続ける意味とは。
「やれる仕事はなんでもします。一人でもたくさんやりたいですけど、舞台には二人で立ちたいんですよね。舞台の上では、自分はそんな特別な人間やと思わない。芸人として一人でやっていける人間ではないので、二人で闘うという気持ちです。村上の存在は…まあ、なんやろう。Aマッソって感じですかね。とにかく、二人で芸人を楽しくやれたらいいと思いますけどね」 自分たちの根幹は、あくまでも「ネタ」。ネタ作りに飽きることはない。いつまでも完成しないものだ、と加納は言う。 「ネタ作りって、ムズいんですよ。しんどいです(笑)。本当に自信があるネタなんて、年に2本できたらいいほうで。単独ライブでは7、8本とかやりますけど、やっぱり手元に残る、今後もやれるなというネタはそんなにあるわけじゃない」 ネタと、コンビでの芸を追究する理由は、やっぱりM-1グランプリだ。準決勝の壁に2度阻まれている。 「やっぱり、決勝に出たい。ずっとできることじゃないじゃないですか、期限もあるので。あと2年ですね。焦ります。M-1というのは、もう、すごい世界。目指す芸人はみんな狂わされるなあ、という感じはしてます。でもコンビで目標といったら、やっぱりそこになるんです」