まずは、長方形でやってみるとよくわかる…じつに、単純極まりない形が「美しく、複雑なパターン」に一変する「驚愕の手法」
テセレーションを作ってみよう
テセレーションの語源にもなった、正方形が角を合わせて並んだいちばん簡単な形からスタートしましょう。 けっこう複雑に見えるテセレーションといえど、意外にシンプルな作業で作られているケースがあります。ここでは、小学生を対象としたワークショップでよく使われる方法を紹介しましょう。 まず、正方形の折り紙を4枚用意します。その4枚を重ねてハサミを入れ、ランダムな形の切片を切り出したのちに、その切片を平行移動して反対側の辺にくっつけてみます。 次の図に示すように、同様の作業を左と右、上と下というふうに進めます。 この図は、あえて魚の形になるように切っていますが、切ってから形状を考えるケースと、最初から切る形状を計画しておこなうケースとがあります。
絵を描いても面白い
最初はランダムでOKです。これでピッタリ合うテセレーションの形状となるのです。 でき上がった形状の上に絵を描いてみましょう。まずは形状をいろいろな角度で眺め、それが何に見立てられるかを考えるとよいでしょう。先の図では魚の絵を描いてみましたが、別の方向に形状を回転して他の絵を描いてもいいでしょう。 切った紙の部分を向かい側ではなく、下側につけたり、裏返してくっつけたりすることでも、別のテセレーションが可能です。省略しますが、数通りの切り貼りによるバリエーションがあります。 そして、正方形の各辺が、90度回転対称の同じ切り方であるとするなら、さらに興味深いパターンが現れます。
辺の回転対称性
正方形の各辺が90度回転対称の同じ切り方であるとするなら、それは次図に示すように、どの方向にも合わせられるテセレーションです。 そのような正方形を基本とする形状を2枚くっつけると、みなさんがよく知っているかもしれない(畳を基本とする)テセレーションになります。
「敷石」に使われる回転対称性
次の図に示すような敷石を見たことはありませんか? 畳と同じ並べ方ができる理由は、短い辺は180度の回転対称形で、長い辺はそれを2回繰り返したようにデザインされているからです。 回転対称性のある辺にはこんな芸当ができるのですが、テセレーションとしての芸術性はあまり高くありません。 それでも少しばかりふしぎな模様であることは確かです。用途によって使い分けるということでしょう。 本記事で取り上げたトピックをはじめ、『ペンローズの幾何学』では、平面図形に現れる対称性や黄金比などのふしぎな性質、最新の発見である「アインシュタイン・タイル(非周期モノ・タイル)」に関する詳しい解説等を紹介しています。 ペンローズの幾何学 対称性から黄金比、アインシュタイン・タイルまで
谷岡一郎、荒木 義明