全米9州で大麻合法化を問う住民投票、うち8州で賛成多数に
トランプ政権下でもさらに広がる見通し
アメリカ国内における大麻合法化をめぐる世論は大きく様変わりした。ヒッピー文化が若者の間で支持された1970年代でも、国内世論は大麻使用に対して決して肯定的ではなかったが、最近ギャラップ社が行った調査では、全米で大麻合法化を支持する声は61パーセントにまで達しており、この40年で世論に大きな変化が生じている。 アメリカにおける大麻合法化で大きなマイルストーンとなったのが、カリフォルニア州が1996年に医療目的に限定した大麻使用を合法化したことであった。これを機に、医療用限定で大麻使用・栽培を認める州が増え、嗜好用大麻に関しても合法化を認めるべきと声が各州で高まり始めたのだ。 アメリカ国内の過半数の州で大麻が部分的に合法化され始めたことは、様々な分野に少なからぬ影響を与えている。ビジネス面で大手企業が大麻をビジネスチャンスとして捉え始めた現状については前述したが、スポーツの世界でも変化が生じそうだ。ナショナル・フットボールリーグ(NFL)の公式サイトは13日、リーグに加盟する10チームのオーナーが選手の大麻使用に対する規定を改正すべきかどうか検討し始めたと伝えている。現在の規定では大麻使用が発覚した選手には出場停止処分が下されるが、これを罰金だけにすべきではないかという声が出ているのだという。しかし、薬物に寛容なスポーツというイメージを嫌うオーナーも少なくなく、結論が出るまでには数年はかかる模様だ。 来年1月に大統領に就任するドナルド・トランプ氏は大麻の合法化についてどのような見解を示しているのだろうか? 実はトランプ氏は大麻に関しては寛容な見解を示してきたことで知られている。 アメリカが「麻薬戦争」の真っただ中にいた1990年は、マイアミ・ヘラルド紙の取材に対し、「大麻を合法化し、その税収を使って、アメリカ全土で他の危険なドラッグに関する啓発や教育を行う方がより有益ではないだろうか」とコメントしている。また、選挙前の10月にネバダ州で行った集会では、「大麻合法化はそれぞれの州で決めるべき問題だ」と語っており、トランプ政権が各州の大麻合法化に介入することはないと示唆している。 連邦法では大麻は違法であるが、州法では合法というケースが増えており、最近はそれぞれの州の法律を連邦政府が尊重する流れが続いていた。しかし、トランプ政権で入閣が確実視されている副大統領候補のマイク・ペンス氏やルドルフ・ジュリアーニ氏(元ニューヨーク市長)、クリス・クリスティ氏(現ニュージャージー州知事)などはこれまで薬物に対して非常に厳しい姿勢を打ち出してきており、政権内で大麻合法化に関するコンセンサスが得られるかは不明だ。
------------------------------ ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト