一生懸命に生きると「私の肘が誰かに当たる」―パニック障害を経たIKKOが語る自分らしい生き方
40代では自分らしさを見失った――でも、それがあって今の自分がある
――パニック障害に悩まされた30代、40代はIKKOさんの人生にとってどのような時期だったでしょうか。 IKKO: 周囲のことよりも、自分のためだけに生きていこうと思った瞬間もありました。特に、40代に入ってテレビに出させていただくようになってからは、嫌なことは全てマネージャー任せにして、自分勝手になっていた時期もありましたね。自分だけのことを考えて生きると、その時は綺麗になったと思うんです。でも、弟子たちに「昔の先生らしくない」と指摘されました。弟子たちの声を聞いて、45歳くらいのときかな、もう一度私らしく生きていこうって思い直したんです。当時を振り返って悔やむこともあるけれど、時計の針は戻せないし、それがあって今の私があると思っています。 ――IKKOさんらしい生き方とはどんな生き方でしょうか。 IKKO: 私らしさというのは、周りの人に対して感謝しながら、気遣いをして生きていくということ。一生懸命生きると、自分の“肘が誰かに当たる”じゃないですか。つまり、成功させよう、頑張ろうという気持ちが強くなるほど、失敗した人たちのことが許せなくなってしまうでしょう。でも、たとえ肘が当たっても、その後のフォローや気遣いをすることが経営者である私にとって大切なことだと思うんです。30代までそうやって生きてきて、苦しさもあったから自分勝手に生きようと思ったんだけど、私にはできなかった。周囲を気遣えない私は、私らしくなかったのかもしれませんね。そのことを弟子たちが教えてくれました。だけど、私の人生が終わるときまでは、どの生き方が正解だったかは分からないと思います。
人生はバランスよく ときに自分を許してあげる時間も必要
――メンタル、体調面で悩みを抱えている方へのアドバイスをお願いします。 IKKO: いま心も体もギリギリのところにいる人は、頑張ろうとしなくていいんです。私がパニック障害になった際、パートナーと一緒にいるときと韓国ドラマを観ている時間は気持ちが楽になって、発作が治まっていました。そんなふうに、少しでも幸せを感じられる瞬間があればその瞬間を大切に過ごしてほしいと思います。例えば、ご飯を食べている時間が幸せだって感じられるのであれば、太ってもいいから幸せに感じる瞬間を優先させてほしいですね。 人生60年近く生きてきたなかで、私も自分に厳しいとき、自分を許すときがあります。雁字搦めになってしまったときは、一旦頭と心を柔らかく緩めてあげる。厳しいことがすべて良いことでもないし、緩いことがすべて良いことでもなくって、人生はバランスが大切だと思いますね。 ----- IKKO 美容師を経て、ヘアメイクに転身後、30代で「アトリエIKKO」を主宰。その後美容家・タレントとして活動する中、コスメをはじめ、振袖等様々な商品開発・執筆・講演活動だけにとどまらず、プロデューサーとしても活躍の場を広げている。2008年女性誌から初の人物賞を受賞以降、国内外で数々の賞を受賞。50代で始めた書道でも、数々の展覧会で入賞している。