「新歓で受けた悪質なドッキリ」にげんなり…国立大を1年で休学した男子学生が、東京藝大に通うまで
興味本位で「藝大の合格作品」を見てしまい…
一方で、辛酸も舐める経験も。学業成績順に振り分けられたクラスのうち、進学クラスと普通クラスを行き来した。勉強に対して「躓いた」というこれまでになかった認識を持たざるを得なかった。 もちろん高校にも美術部はあったが、体験入部止まり。絵が好きだという気持ちがあったものの、粛々と絵を描く雰囲気が魅力的に感じられず、本入部には至らなかった。美大進学も視野に入らなかったという。 「美術系の道に興味はあったのに、とても現実的だとは思えなかったんですよね。周囲には美大に行く友人もいなかったし、高校の先生からは国公立大学以外を勧められませんでした。興味本位でネット上で藝大の合格作品を検索しましたが、作品のクオリティの高さに驚いて……。こんなにうまくなれるわけがないし、自分とは世界が違うと思ったんです」
この大学に4年間も居たら「人生はつまらないんじゃないか」
結果、現役時代は進路指導の方針通りに勉強し、前述の通り静岡大学教育学部に進学した。学校のカリキュラムをこなし、国立大学への進学を叶えるも、高校時代は閉塞感を抱えて生きた。静岡大学にたどり着いたのは、結局のところ、自由な環境を追い求めて都心部に行きたいという気持ちと、当時の学力との兼ね合いによるところが大きい。 「勉強はそこまで好きではありませんでしたが、さりとて偏差値レースを拒絶するほどに進路に対して固まった意思もなくて……。結局、『ライ麦畑で捕まえて』という小説の登場人物に影響され、迷う子どもを助けられるような存在になりたいと思い、教育学部を選びました。今思えば浅はかな考えだと思います。 私にとっての大学生活の始まりは、新入生歓迎会で受けた悪質なドッキリ。オリエンテーションで1年生の中に先輩が紛れてるという内容なのですが、緊張しながらも周りとこれからの人間関係を必死に築いている新入生の気持ちを尊重してないと思いましたし、僕らの驚いた顔を見て楽しそうにしている上級生に嫌な印象を抱きました。男性の先輩が『女子学生の中で誰が一番可愛いと思う?』と聞いてきたのもとても不快になりました。なんでそんなことを聞いてくるのか、自分も来年再来年にはこうなるのか、と。 その後も大学生活は思ったよりも楽しくなくて、『とにかく何かしなきゃ』という焦りだけはあるのに、授業も課題も全くやる気が起きず。このままこの大学に4年間も居たら、人生はつまらないんじゃないかと、不安でいっぱいでした」