ネット大炎上のRIZIN配信トラブルの原因はサザン、B'z超えのアクセス殺到…謝罪の榊原CEO「大失敗を教訓に」
メインで朝倉に判定負けした萩原が「こういうのは昔から慣れているのでまったく影響はなかった」と語るように、遅れが1時間で留まったため、出場したファイターたちへの影響も出ていなかった。 それでも榊原CEOは「言い訳ができない。心からお詫びしたい」と謝罪。購入したが視聴できなかったユーザーへの払い戻しなどの「アフターケア」に対応することを明言した。 最終的な契約視聴者数は明らかにされなかったが、U―NEXTで過去にライブ配信されたサザンオールスターズ、B'zらの超ビッグアーティストの契約視聴者数を上回り、UーNEXT過去最高の数字を叩き出したという。 「格闘技の力、RIZINチームの力を示すことはできた。しっかりと見れたお客様には楽しんでいただけたのではないか」 ただ日本の格闘技界のPPVで過去最高の契約数を記録した2002年8月に国立競技場で行われた「Dynamite! SUMMER NIGHT FEVER in 国立」での10万件には及ばなかったという。 この大会はセミファイナルでバルセロナ五輪柔道金メダリストの吉田秀彦氏が総合格闘家としてデビューし、ホイス・グレイシーと戦い話題を集めていた。 「僕らが目指すのは、この数字じゃない。海外でのタイソンやメイウェザーとローガン・ポール戦は100万件を超えている」 全米では、15年ぶりにリング復帰した54歳の元世界ヘビー級統一王者のマイク・タイソンとロイ・ジョーンズ・ジュニアのエキシビションのPPV購入者数は視聴価格が49.99ドル(約5500円)で160万件、那須川天心と戦った無敗の元5階級制覇王者、フロイド・メイウエザー・ジュニアと人気YouTuberローガン・ポールとの異色マッチも100万件の購入者数があった。まだ米ビジネスの域には、足元にも及ばないが、RIZINは、この方式に新しい可能性を見出そうとしている。 今回、RIZINが、異例のPPV型のイベントを仕掛けた背景には、新型コロナ禍で会場にファンを入れてチケット収入をメインとする従来型のビジネススタイルが不安定であるという事情がある。行政の方針により、人数が制限された上に感染予防対策の経費もかかりリスクがある。米国では、昨年プロボクシングや総合格闘技がPPVを軸にしたスタジオマッチで危機を乗り切ったという例もあり、新型コロナ禍の時代の新しい格闘技イベントの実験的なパターンとしての挑戦だった。試合数を4試合に絞ることで、主催者のファイトマネーの負担も軽減され、スタジオマッチであることから、会場費などの出費も抑えられ、もし海外並みの視聴件数を稼ぐことができれば、ビジネスとしての魅力はある。 朝倉未来も「面白い試み。(新型コロナで)大きな会場を借りるのも難しい状況だけに現代的でいい。選手もリングに上がる機会が増える。スター選手も少なくなっているし、育成として、こういうところに力を入れるとすごくいい」などと賛同していた。 今回、U―NEXTがプラットホームとしての脆弱性を露呈したため、「今後、U-NEXTと共に進むかどうかも含めて検証しなければならない」と、榊原CEOは、配信会社の変更の可能性も匂わせた。だが、実験的イベントの旗揚げ戦をU―NEXTと組んだ狙いには、映画や音楽、アニメなどコアな格闘技ファンとは志向の異なった会員を多数持っているという点がある。格闘技ファンの層をコアからライト層に広げるきっかけになればという観点だ。 これまで大晦日大会では、視聴率戦争に勝利するため、格闘技ファン以外の層を勝ち取るための異色カードを用意するなどの仕掛けをしてきたが、今回のイベントもある意味、新しい市場の開拓になればというチャレンジでもあった。 「いずれにしろインフラの整備が必要。直前の申し込み殺到を避けるため、事前購入者には500円を割引きするなどの特典もいるのかもしれない。今回の大失敗をプラスに変えて次へ進みたい」と榊原CEO。 「RIZIN LANDMARK」の第2弾は未定。だが、2時間以内にコンパクトにまとめられた今大会は、1試合目から3試合目までが、すべて1本勝ち、KOで決まり、メインの朝倉ー萩原戦も判定決着にはなったが、緊張感のあるレベルの高い白熱の試合となり、配信トラブルさえなければ、新たな可能性を感じさせる大会となった。朝倉未来のようなキラーコンテンツになりうる“引き“のあるファイターの登用が不可欠にはなるのだろうが。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)