SNS は本当につまらない場所なのか?ユーザー心理とプラットフォームの本質を問い直す
見えない感情の事象化とアップデート
SNSでいわれてきた従来のルールやリテラシーは従来の常識。大概は手法を攻略するか、勝ちパターンを見つけ運用方法を模倣するなど、表面的な部分しか行き着けていない場合がほとんどだ。 ある意味でSNSは、原点回帰のタイミングではないだろうか? 自然の原理の如く、SNSは水のような特性といえる。形や流れが変化していることを踏まえると、いま人々に求められるのは、「見えない感情の事象化とSNS思考のアップデート」ではないだろうか? ここからは、著者でありSNS領域でクライアントワークや様々なステイクホルダー達との意見交換を行ってきた数年の情報、およびSNS従事者の一員としてSNSの本質について切り込んでいく。 正直なところ、発信者であっても、受け取り手であってもまず「SNSは誰のためのものなのか」という点をどう解釈しているかで、その人のSNSリテラシーが問われる。 闇雲にSNSアカウントを開設する、SNSでフォロワーを増やしたいという漠然とした目標に対しても、「何のために」という点での議論が抜けてしまう。そして意外にもこの点について語られているケースが少ない。 たとえば、ラグジュアリーブランドのボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)は2021年に、公式アカウントを突然消したことで世間の注目を浴びた。当時、彼らにとってソーシャルメディアからもたらされる最大の価値は、ユーザー自らがプロモーションに参画し、リアルな声としてUGCが創出されることとしていたからだ。 もっとも重視していたのは、ユーザーからの直接的な声や反響がどれだけソーシャルメディアで集まり、ブランディングにつながるかという点だ。 意外かもしれないが、SNS運用を行うことが必ずしもSNSというプラットフォームでユーザーの心を射止める唯一の方法とは限らない。当時、ユーザーによって約140万人規模のファンアカウントが立ち上がるなどの現象を考えると、SNS活用がアカウント運用だけではないということが明らかになった。