MUFGの監督責任問わぬ金融庁の思惑 三菱UFJ銀などに改善命令
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の銀行と証券2社が顧客の同意を得ずに重要情報を共有していた問題で、金融庁は24日、金融商品取引法に基づく業務改善命令を3社に出した。MUFGには銀行法に基づく報告徴求命令を出し、発生原因の分析や改善対応策を1カ月以内に報告するよう求めた。 行政処分の対象になったのは三菱UFJ銀行のほか、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券。証券取引等監視委員会が14日に処分を勧告した際に認定した事実を、金融庁はそのまま転用した形になった。 金商法に違反する行為は、2019年から23年にかけて100件以上見つかった。グループの証券会社への情報提供を顧客企業が拒否しているのに、三菱UFJ銀の当時の専務執行役員がこの企業の政策保有株式の売り出しに関する非公開情報を証券側に伝えていた。 銀行に認められていない有価証券業務を繰り返す中では、顧客が希望する融資の条件を受け入れる代わりに、証券取引の拡大を求めていたケースもあった。 「国内最大のメガバンクグループでガバナンス(統治)を徹底する意識が欠如しているのは、金融業界全体の信頼を失墜させかねない」。14日に勧告を出した後、監視委幹部はこう語っていた。 ●不正な情報共有をトップも把握 顧客の意思に反した情報共有については、経営トップも把握していた。複数の関係者によると、三毛兼承MUFG会長(19年から23年にかけては三菱UFJ銀頭取、MUFG社長から副会長を経て現職)は、顧客から苦情を直接受けたにもかかわらず、似た事例がないか確認するよう指示したり、再発防止を徹底したりすることはなかったという。 金融庁は持ち株会社のMUFGについて、経営・内部管理の体制が不十分だったと見なしつつ、行政処分とは異なる報告徴求命令を選んだ。報告徴求命令は本来公表されないのが慣例なので、改善命令に準じる扱いではある。 ただしMUFGは、問題の発生を身近で認識しながら軽く扱った三毛氏が会長に就いている。ある金融庁幹部は「グループ全体を統括する組織の業務改善命令まで踏み込んで、コンプライアンス(法令順守)の感覚が十分に根付いているか厳しくチェックする手はあった」と振り返る。