日常生活で“無礼な扱い”を受けると老ける!? 「老化と差別」の関係を明らかにした最新研究
今回の研究の背景は?
編集部:ニューヨーク大学の研究グループが、差別と老化に関する研究を実施した背景を教えてください。 中路先生:人種、性別、体重、障害などのアイデンティティに基づく差別を経験した人は、心臓病、高血圧、うつ病など、さまざまな健康問題のリスクが高まるという研究結果がすでに報告されています。 こうした健康問題のリスクが高まることに対して、正確なメカニズムは完全に解明されていませんが、身体のストレス反応の慢性的な活性化が一因である可能性が高いことを研究グループは指摘しています。 研究グループは、持続的に差別されることで老化の生物学的プロセスとの関連性を指摘する研究が増えていることに着目しました。 そこで、差別と老化の関係をよりよく理解するために、ストレスと老化プロセスの生物学的影響を評価するために使用できるマーカーであるDNAメチル化の3つの測定に注目し、今回の研究が実施されました。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部:ニューヨーク大学の研究グループによる発表への受け止めを教えてください。 中路先生:「老化のプロセスの進行」には様々な要因が影響し、その因果関係を証明する多くの研究がありますが、これまで差別と老化のプロセスの進行の関連を調べた研究はなかったため、大変興味深い研究であると考えます。 対象の多くが中高年の白人で、その過半数が女性であるため、若年の有色人種の男性などに関してのデータは乏しいことや、差別と感じるのには個人差が大きいなどのバイアスの存在には注意が必要と考えられますが、老化のプロセスの進行の指標に採血での生物学的マーカーを用いたことは素晴らしい研究と言えるでしょう。 また、職場の差別よりも日常生活における差別の方が老化のプロセスの進行に影響していることから、今後は個人の差別の解消を進めていく必要があると考えられます。
編集部まとめ
アメリカのニューヨーク大学の研究グループは、「差別を受けることで老化の生物学的プロセスを早める可能性がある」という研究結果を発表しました。今回の結果はアメリカでのデータになりますが、差別はどの国でも、もちろん日本でも起きる可能性があります。差別と健康への関係を示した今回の研究結果は注目を集めそうです。
【この記事の監修医師】 中路 幸之助 先生(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター) 1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
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