“令和の怪物”佐々木の故障予防の決勝登板回避に賛否
登板回避か、甲子園出場か、の議論とは、違う論点にはなるが、決勝戦の佐々木登板回避の是非ではなく、ここまで6試合の起用法に関する「甲子園出場のために監督は最善を尽くしたのか」という批判もあった。 国保監督は、この試合で4番で起用してきた佐々木を打席にも立たせず、準々決勝で好投した大和田健人(3年)や和田吟太(3年)も健康への配慮を理由に使わなかった。佐々木を先発、完投させなくとも彼らとの継投策で勝ち切るプランはなかったのか。或いは、佐々木は4回戦で延長12回を一人で投げ切り194球を投じたが、この試合で無理させる必要があったのかという意見や、決勝登板から逆算して準々決勝ではなく準決勝を休ませておくべきだったのではないかという声もある。ただ、これらは「故障を防止するため」の決断とは違う議論だろう。 また過密日程に関する意見も多く見られた。甲子園は8月6日からスタートで十分に期間があり、他地区では、まだ代表の決まっていないところがたくさん残っている中で、準決勝、決勝を連戦にする必要があったのか、という声だ。甲子園では6年前から準決勝前に1日休養日が設けられるようになり、タイブレークも導入されるようになったが、地方大会では、まだ過密日程が続いている。準決勝と決勝の間に1日でも休養日があれば、佐々木の登板も検討されたのかもしれなかった。またトーナメント制に対する異論も出ている。 長年プロのスカウトを務め、球児達の成否を見てきた元ヤクルトのスカウト責任者だった片岡宏雄氏は、今回の佐々木の登板回避について、“未来の見地”からこんな見方をしている。 「おそらく佐々木を追いかけているプロのスカウトは複雑な気持ちだろう。無理させず怪我しなくて良かった、という安堵感と、もしかすれば、どこか怪我をしたのじゃないか、という疑念だ。彼は甲子園後の国際試合に招集されるだろうから、ドラフトまで怪我の有無についての調査が重要になってくるだろう。プロ側からすれば登板過多は避けてもらいたいのだが、怪我でもない限り、怪我の予防で、3年間努力してきた甲子園のかかった決勝戦を回避することは考えられない。昔は、よくプロ注目の投手が、決勝まで温存されて負けてしまうというケースはあったが、決勝戦で怪我もなく投げないなんて見たことがない。それが今の時代、これからの野球の流れなのかもしれないが、野球は気持ちのスポーツである。プロはなおさらそう。こういう大事な試合で、投げなかったことで佐々木自身がプロで成功するために非常に重要になってくる気持ち、メンタルの部分に不安が残る。執念の部分。何年後かに大成功して、この時の登板回避が生きてくるような形になればいいのだが……」 佐々木の決勝戦での登板回避問題は、高校野球のあり方に大きな問題提起をすることになった。「そもそも当事者が決めたことを議論するべきではない」との意見もあるが、この決断の本当の是非は、何年後かに明らかになるのかもしれない。